Aタイプの中毒を起こす猛毒きのこ
〔毒成分〕


〔毒成分〕ヨ−ロッパでタマゴテングタケ(Amanita phalloides)の毒成分としてファロイジンがLynen と Wieland,H. により1937年に分離された。戦争で構造決定は中断されたが,1962年にアミノ酸の配列が発表された。ファロイジンはアミノ酸7個からなる環状ペプチドで,その後構造決定された類似の一群の化合物とともにファロトキシン類(phallotoxins) と総称される。

 Lynen と Wielandは,まだ純粋に出来ないが,より強い毒性の化合物があると報告していた化合物が1941年ついに Wieland,H. と Hallermayerらにより結晶化され,アマニチンと命名された。のちにこれはアミノ酸8個からなる環状のペプチドであることが判明し,類似の一群の化合物とともにアマトキシン類(amatoxins) と総称される。

 またドクツルタケ(Amanita virosa) はファロトキシン類とアマトキシン類のほかに,ビロトキシン類(virotoxins)を含むことが判明した。

 ファロトキシン類は速効性で,F−アクチンに特異的に結合し,膜を特異的に破壊する。動物(マウスやイヌ)の腹腔にファロイジンを注射すると1〜2時間で症状があらわれる。肝臓細胞の膜が破壊されるため,それが血栓となり,肝臓に多量の血液が急激に蓄積し,そのショックで動物は死亡する。
 しかし ファロトキシン類とビロトキシン類は経口的に与えたものは(腸管から吸収されず),毒性を示さないため,きのこ中毒に関係しないとの考えもある。

 アマトキシン類は15時間くらいで症状が表われる遅効性の毒で,ファロトキシンに比べ10倍ほど毒性は強い。アマトキシン類は9つの化合物が知ら,猛毒の本体はアマニチンで,αアマニチンのヒトに対する致死量(LD50) は0.1mg/kg (p.o.)である。従って体重 60 kgの人は 6mgのアマニチンを摂取すると致死量(LD50) に達することになる。一方, 生のAmanita phalloidesの幼菌(25g)中にはアマトキシンを5-11mg含み, 致死量(LD50)に達していることがわかる。

Bodenmuellerらの分析によるとAmanita phalloides中のアマトキシンの46% はひだに含まれ,のこりが傘(22%),柄(23%),つぼ(9%)の部分に含まれていた。

 αアマニチンは真核生物のRNA ポリメラ−ゼB(orII) と特異的に結合するため,DNA の遺伝情報がm RNA に転写できなくなり,その結果タンパク合成が阻害される。このタイプの毒を持つきのこの水抽出物をマウスに与えると,肝臓の異常に敏感に反応する血液中の酵素SGOT(serum glutamic oxaloacetic transaminase) などが劇的に増加し,血中のグリコ−ゲンが減少し,血中の尿素窒素は増加する。