Aタイプの中毒を起こす猛毒きのこ
〔きのこの見分け方のポイント〕


〔きのこの見分け方のポイント〕テングタケ科のきのこには食用とされるものと,猛毒のものがあり,食毒に関しては見分け方の一般的な法則がなく,経験のみが頼りなので, 大変困る。

 ドクツルタケとシロタマゴテングタケはともに我国に広く分布し,きのこ中毒での死亡例の大部分はこの両者による。両者はともにきのこ全体が白色で,区別しにくいが,ドクツルタケは柄の表面に白色の鱗片があり,傘の表面にうすい水酸化カリウムの水溶液をつけると,鮮やかな黄色になるのでシロタマゴテングタケとは区別できる(1-10% 程度の水酸化カリウム水溶液ならよい)。

 タマゴテングタケはヨ−ロッパでは普通に見られるきのこであるが,我国では非常に稀である(北海道では時々見かけるという)。ひだに濃硫酸を1滴つけると淡紅紫色に変色する。この反応はこのきのこに特有なのでヨ−ロッパではよく用いられる。ヨ−ロッパにおいては,Wieland らによるこのきのこの毒性分に関する100 年以上にわたる研究の歴史がある。

 タマゴタケモドキは広く分布し,傘と柄はくすんだ黄色で,柄に細かい鱗片がある。
 コテングタケモドキはアカマツ・コナラ林に普通に見かける大型の日本特産のテングタケの仲間で,傘は褐色を帯びた灰色。白色でやや先のとがるつぼを持つ。このきのこが環状ペプチドを含むかどうかは調べられていないが,GABAの合成を阻害するアミノ酸であるアリルグリシン(allylglycine)とプロパルギルグリシン (propargylglycine) が単離された。共に細菌に対し生長阻害作用があり,前者はラット腹腔内に注射するとけいれんを伴う中毒を起こす。これはこの化合物がGABAの生合成に関係するグルタミン酸デカルボキシラ−ゼを阻害し,脳内のGABAのレベルを下げることにより発現すると考えられている。上記の 2種のアミノ酸のほかに不飽和のアミノ酸 4種類が単離されている 。

 タマシロオニタケは全体が純白であるが,柄の基部がカブラ状に著しく膨れる。1978年長野県でタマシロオニタケと思われるきのこを 2名が食べ,2名とも死亡している(河原 勲氏私信:当時は正確に同定できず,厚生省の全国食中毒事件録にはテングタケ類ではないかと推定している)。山浦らによると水抽出物はマウスに有毒である。環状ペプチドは調べられていないが,4 種のアミノ酸が単離されている。すなわち 2-アミノ-5-クロル−6-ヒドロキシ-4-ヘキセン酸(2-amino-5-chloro-6-hydroxy-4-hexenic acid),アリルグリシン,プロパルギルグリシン,2-アミノ-4, 5- ヘキサジエン酸である。

 フクロツルタケは全体が白〜淡褐色で,傘や柄の表面は綿くず状の小鱗片におおわれ,大きなつぼを持つ。肉は傷つくと次第に淡紅色になる。

 ドクアジロガサは腐った木材などから発生し,胞子は褐色で,表面にいぼがある。よく似たものにセンボンイチメガサKuhneromyces mutabilisがあるが,胞子の表面は平滑なので,顕微鏡で調べれば区別できる。

 ニセクロハツはクロハツRussula nigricans に似るが,クロハツがひだや肉を傷つけると,赤変し,その後黒くなるのに対し,ニセクロハツは赤変するが,黒くならない。最近3種のアミノ酸(2S,3R)-(-)-3-hydroxy baikiain,baikiain, pipecolic acid が単離された。

 最初のものはは菌体中に高含量(1.4%)で含まれ,毒性はない。2番目のものはグルタミン酸のアンタゴニストとして作用することが知られている。3番目の化合物は脳内リジンの主要代謝産物で,脳内GABA系との関係が示唆されており,今後の研究が期待される。