湖心会会報 第26号 抜粋

目次

 特集:国立大学のゆくえ

   「国立大学の構造改革」
[湖心会のトップページに戻る]

 平成13年度は、小泉内閣による構造改革をキーワードとする年でした。もちろん国立大学も例外ではありません。改革の波は、私たちの滋賀大学教育学部にも押し寄せ、いくつかの重大な決断を迫ろうとしています。国立大学に何が求められているのか、近い将来どこに向かおうとしているのか。今号は、この問題を特集しました。

・滋賀大学と教育学部を取り巻く最近の動向

        井深信男

 いま、教育学部は戦後の教育改革以来の大変革に曝されています。48ある国立教員養成系大学・学部の定員は、少子化にともない約1万人となりました。これは最大定員時の半分以下の数字です。減らされた定員の多くは、いわゆるゼロ免課程に転換されました。本学の情報教育課程と環境教育課程がそれに当たります。多くの関係者はこれで乗り切れると思っていましたが、行政レベルの構造改革の流れのなかで、48の教員養成系学部・大学を再編成して、教員養成を主に担当する教員養成系学部・大学と一般大学に分ける方針が国より打ち出されました。これで1学部当たりの教員養成の定員を300〜400に戻し、足腰を強化し、その一方ゼロ免課程は教員養成系学部・大学にはおかないとされています。そのため、単純計算すると48大学・学部は半数近くに減るのではないかと見込まれます。滋賀大学から教員養成がなくなることは、滋賀県の教育にとって大きなマイナスなので、学部を挙げて教員養成の発展充実策を議論しています。一方、県にも教員養成の存続を国に請願してもらっていますが、先行きは不透明です。
 国立大学は平成16年4月より独立法人化される予定です。滋賀大学はその前に、滋賀医科大学との統合をめざし、数回協議を重ねてきており、おおむねその方向で合意されています。しかし、もう少しスケールの大きな大学にするとなると、医大だけでは不十分で県域を超えて統合協議が進むことになるかも知れません。統合協議は相手があるので、滋賀大学だけの意思で決められず、先行きを見通すのは現段階で困難です。
 いずれにしても、湖心会会員の皆様の滋賀大学に対する大きな応援を期待しています。


・国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(在り方懇)報告書について

        児玉典子

 新聞紙上でも時々皆さんが耳にしていた「在り方懇」が、平成13年11月22日に最終報告書を出しました。簡単に概要を説明すると、国立の教員養成大学・学部は、大まかに8つの課題を抱えていること(力量ある教員養成、特色を持った教員養成、特色ある教育研究、学校現場との連携協力、大学院の充実、付属学校と大学・学部との連携他)、そしてこれらの課題に応えるために、今後の教員養成学部の果たすべき役割を学部と大学院について検討し、組織・体制の在り方及び付属学校の在り方を見直していくべきだということです。
 本文は34ページにもわたり、その中で様々な提言がなされています。現在、「遠山プラン」の名の下に国立大学の統合再編が議論されており、滋賀大学でも統合の計画が検討されているところです。その中で、私たちの教育学部を今後どうしていくのかが、教育学部の中で真剣に議論されています。まだ結論を見るには至っていませんが、精力的に取り組んでいる最中だという報告だけをここでお知らせしておきます。



・ファカルティ・ディベロップメント

        千原孝司

 ファカルティ・ディベロップメントとは、faculty developmentのことで、文字通りの意味では、資質・能力を開発することです。これが大学改革、特に大学教育に関係して用いられていますから、大学教員の資質・教授能力の開発を意味することになります。大学審議会のメンバーは、誇り高い大学教員に対して「教授能力を高めなさい」とは言えないので、英語表現にしたのでしょう。
 ところで、大学はそれぞれに教育目標を持っていて、それを実現するためにそれぞれの科目が開講されており、それぞれの科目はその内容と履修の達成水準が決まっているはずです。それで、シラバスという聞きなれないことばですべての科目の内容、目標、評価の方法などを示すことが始められました。これにしたがって学生は科目の選択を行うことになります。一方で、第三者がシラバスを見ると科目配置の適切性がわかりますし、このシラバスを基準にして実際の授業をチェックすることができます。「実際の授業」の資料は学生がその授業を評価することで得られます。こうしてカリキュラムの点検になるとともに各教員の教育活動の点検にもなります。
 近年の大衆化した大学の学生に対しても従前の授業を実施する大学教員が多いという実態から、ほとんどすべての大学でファカルティ・ディベロップメントが必要となってきたわけです。滋賀大学でも、学生による授業評価を組織的に行うようになっています。


事務局・教室だより

○平成12年の卒業論文,心理学関連修士論文には以下のものがありました.
<卒業論文>
教師と子どもの間のいじめ観の相違                 太田祥子
怒り喚起場面における攻撃行動に及ぼす社会的スキル及び自尊感情の関係 加納千恵里
カテゴリー文脈下の馴化と逸脱における事象関連電位         河野良子
性格における理想と現実のズレの捉え方と対人関係及び充実感との関連 木村知美
羊水から初乳への刺激変化がSlc:ICRマウス胎児の反応に及ぼす効果   辻野道子
4〜5歳児における人気児の特性認知に関する縦断的研究       原田啓一郎
ストレス効果と季節性の関係の実験的検討              星野絵美
対人恐怖的心性と過去の辛い経験との関係について          水谷佳代
事象関連電位に見られる二重課題下における標的反応について     見舘健太郎
新生児期のエストラジオール投与が                  村田詩絵
      Slc:ICRマウスのplay fightingに及ぼす影響
シリアンハムスターの冬眠過程における雌雄差の検討         山口沙和美
タイプA性格傾向とストレスを感じる学級風土            吉岡 葵
内的ワーキングモデル・保育知識・保育経験が保育行動に与える影響  吉山景子
<修士論文>
児童の自己開示がself-esteemに及ぼす影響              山ア 賢


[back]