湖心会会報 第27号 抜粋


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・関西心理学会が滋賀大学で開催

        近藤 文良

 関西心理学会は1927年に発足し、会員数は1200名を超える地方学会としては全国で最大の規模の学会です。その関西心理学会第114回大会が昨年12月1日、滋賀大学教育学部で開催されました。
 井深先生を準備委員長として心理学研究室や幼児心理、教育情報研究室の心理系教官や研究室学生・院生の長期にわたる協力の下で大過なく運営することができました。
 大会は次の3つの内容で構成されました。1つは公開講演会。理化学研究所 情動機構研究チームリーダーの二木宏明先生に『脳と感情:感情の仕組みはどこまで明らかになってきたか』を話していただきました。感情中枢はどこなのか、現在どこまでわかっているのか、最近の研究展開はどうなのか、特に遺伝子レベルでの脳と感情の研究の一端を披露していただきながら熱気ある講演をしていただきました。2つ目は『いま心理学教育を考える』というテーマのシンポジウム。同じ35番教室で心理学教育に関わる多くの先生方が参加しました。大学教育を改革する流れは全国に広まっており、心理学教育もその例外ではありません。多くの大学で様々な取り組みや工夫がなされており、このシンポジウムではそれらの経験を交流しながら、より充実した教育をおこなおうという観点から4名のシンポジストを中心に熱意ある議論がなされました。3つ目は個人発表です。今年は49件の発表があり、特に大学院生を中心とした若手研究者の発表が目立ちました。
 当日は参加者155名を得、主会場も「研究棟」という名称の新棟で行われ、明るくて清潔感のある会場でしたので好評でした。
 およそ半年間に及ぶ準備作業や当日の煩雑な運営作業をほぼ完璧に遂行した心理学教室の底力をあらためて感じる機会でもありました。

滋賀県学校心理士会の活動

        若松 養亮

 1997年に日本教育心理学会を母胎に作られた「学校心理士」の資格を取得する人が、少しずつ増えてきています。心理学教室出身の方でもこれから取得する方が少なからずいらっしゃると思いますので、この場を借りてどのような資格なのか、どのような活動をしているのかをお伝えしたいと思います。

 心理学に関わる資格は、学部卒の人が取得できる「認定心理士」、臨床系の大学院を出て実地経験も積み、試験もある「臨床心理士」が知られていますが、学校心理士はその難易度から言って中間に位置すると言えるでしょう。内容・領域としてはその名の通り、学校教育上の問題を、心理学的な見地から専門家の視点で対処できることを示す資格です。今年度からは、スクール・カウンセラーへの登用も始まりました。取得にあたっては心理学系の大学院(修士課程)で学ぶことが求められますので、本学の大学院、教育学研究科で学んだ人たちが資格を取り始めています。本会の会員でも取得した人がいますし、当教室の教官5名は、97年の設立当初、全員が申請し、資格を得ることができました。現在この資格は、日本特殊教育学会など全部で5つの学会が関わる連合資格になっています。資格の概要や取得方法に関しましては、学校心理士のホームページ(http://www.gakkoushinrishi.jp/)をご覧ください。
 表題にも書いた「滋賀県学校心理士会」とは、その地区活動のために作られた会です。全国規模での活動や研鑽の機会が提供されていますが、地理的に参加しにくい方もおられるので、地区単位での活動が奨励されています。滋賀県の地区部会は、98年の11月に設立されました。本部は当心理学教室に置かれており、理事長は千原孝司先生(元心理学教室所属、現在の所属は文化情報コース)が引き受けられ、児玉先生と私が理事、渡部先生が監事を務めています。
 現在のところ、主たる活動はニュースレターとホームページ(http://www.shiga-u.ac.jp/~wakamatu/gakkopsy.htm)による情報発信ならびに交流と、年1回程度の研修会です。ニュースレターには会員の交流の役割も持たせ、会員の紹介コーナーも先日の最新号から始まりました。研修会では、大学教員による講習と、小学校から高校の教員による話題提供が交互になされ、現場での課題や難しさといった実情とも合わせて、学校心理士の役割やノウハウ、そして実践の上で役立つ知識を学んでいます。今後の研修会では、アセスメント(心理査定)の方法などの、ふだん学びにくいことがらをより専門的に学んでいければと考えています。また研修会の一環として、これまでは1回しか開催されていなかったケース検討会も充実させようという計画もあります。これらの研修会については、会員外の方も参加が可能ですので、上記ホームページの告知をご覧ください。
 近年は、心理学関連の資格も多くなりました。しかし、学校現場での問題に対処するという課題・要請は切実ですし、また教育心理学の理論と実践の橋渡しや高め合いという点でも意義がある資格です。滋賀県のこの支部は、他府県と比べて小さなものですが、その発信基地やベースキャンプの役割を担っていけたらと考えています。



事務局・教室だより

○ 平成14年度の卒業論文,心理学関連修士論文には以下のものがありました.

<卒業論文>
岩本すみれ 算数の授業場面における子どもの挙手行動を規定する要因について
大竹亜矢子 大学生の親からの自立における要因について
大森裕美子 日長変化とストレス効果
河野仁美  母乳の反復刺激が帝王切開されたSlc : ICRマウス胎児の反応に及ぼす効果
黒田明良  自尊感情と身体的自己効力感が痩身願望者のダイエット手段選択に及ぼす影響
武内美緒  プロゲステロンとエストロゲンの急性投与が卵巣摘出されたSlc:ICRマウス
      のモリス型水迷路の遂行に及ぼす影響
中川久美子 3,4歳児におけるカテゴリー化能力の発達的特徴
橋本美咲  運動技能学習における筋感覚的イメージと視覚的イメージの効果
長谷美佳  学校適応感と関連する学校生活場面の検討
平田藍子  中学生の同調行動を規定する要因
藤田あゆみ 驚愕性瞬目反射に及ぼす先行刺激の嫌悪性及び時間間隔の効果
水川恵里  幼児期の感情理解における相互作用の影響
水村浩樹  餌のランダムな剥奪に由来するストレスに対する遊具環境の効果
山本顕典  教職志望意識に影響を与える教育実習中の出来事の検討

<修士論文>
石川百合子 「絵本の読み聞かせ」と自律性に関する実証的研究
西岡 寛  シリアンハムスターにおける冬眠とストレスの関係


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