湖心会会報 第32号 抜粋


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 若松先生が博士号を取得されました

 本年3月に、若松養亮先生がご出身の東北大学より博士(教育学)の学位を授与されました。論文タイトルは「大学生の職業・進路未決定の教育心理学的研究 −一般学生における意思決定遅延の解明−」です。
 これを記念して、若松先生にご指導頂いた卒業生を中心とした呼びかけ人の会がお祝いの会を企画し、去る7月25日にその集まりが持たれました。当日はあいにくの雨にもかかわらず、関口先生と井深先生や、遠くは名古屋から駆けつけた卒業生など、25名の参加がありました。集まった者の年齢層が比較的近く、昼食を兼ねた形式ばらない集いであったせいか、予定の2時間半を大幅に超えて楽しく歓談いたしました。
 なおこの集まりに関しまして、湖心会員全てに開催のご案内を差し上げるのが筋ではございましたが、若松先生ご自身のご意向もあり、若松ゼミの卒業生のみとさせていただきました。悪しからずご了解下さい。
 今回若松先生に、学位取得までのご苦労や思い出を語っていただきました。



 学位論文を書き上げて

  若松養亮

 ここ数年、学位論文(博士論文)の執筆に取り組んでいましたが、2008年9月に書き上げて母校の東北大学大学院・教育学研究科に最終提出をすることができ、本年1月の研究科委員会にて学位「博士(教育学)」が授与されました。これまで本学心理学教室の先生方には励ましていただいたり、学内の仕事で便宜を図っていただいたりとご迷惑をおかけしました。そのうえ本年7月には、卒論・修論の新旧指導生の皆さんにもお声がけしてお祝いの会まで開いていただき、たいへんありがたく、また嬉しく思いました。本稿では、その学位取得の経過や所感などを簡単にご報告したいと思います。
 博士論文といっても、近年、多くは現役の大学院生が書いています(こうして取る学位を「課程博士」と呼びます)が、私の世代より少し後ぐらいまではまだ、「文科系は40代ぐらいに自分の研究の中間まとめとして書くもの」という雰囲気でした。このような書き方で書いた論文による学位を論文博士といい、長い期間にわたる研究をまとめるため、調査や実験の回数も、また論文のボリュームも、そして水準もレベルの高いものが求められます。私のテーマは、大学生の進路未決定(一定時期までに進路意思決定が終えられないこと)の要因を究明するものでしたが、例えば「問題」章のなかでは「なぜ未決定が問題なのか」を論じるだけでは足りないと言われました。すなわち「それが進路意思決定研究の中でどのような位置を占めるのか」「進路選択や青年心理学の既存の理論や知見と、どのように関わり合い、また何をもたらすものか」といった点まで展開することが求められたのです。さらには論文に掲載した複数の調査研究全体を覆う、統合的な問題意識が求められ、またそれに対応して「結局この論文全体から何が言えたのか」についても書かなければいけません。それまで、1本の論文のなかに含める調査がせいぜい1〜2本という経験しかなかった私には、たいへんな難題でした。しかしそのハードルを越えることが、博士という称号を得る所以なのでしょう。
 そのような博士論文を執筆する作業に身を置くと、確かにつらいものではありましたが、「先行研究や理論から自分の研究目的へ、そして調査デザインへ」、あるいは「ある研究の調査内容と別の研究の調査内容のつながりや相互関係から、それをまとめあげる問題意識の新たな切り口へ」といった、研究や論文執筆に必要な高次な思考とでもいうべきことが少しずつですができるようになっていく感じがしました。それはまた、学部生・院生のみなさんに論文指導をしていても感じました。昨年までは言ってあげられなかったことを今年の論文指導では気づけた・言ってあげられた、ということをしばしば感じました。
 これを読んでおられるみなさんは、多くが「研究をして論文を書く」という営みから離れているとは思います。しかしこうした「自分がこだわってきたテーマ・仕事を一定水準のものまでに引き上げる努力」は、多くの人が体験し、また今後求められていくものだと思います。自分の努力もさることながら、研究室の先生や学生のみなさんの協力があってなされるもの(期間中、授業準備や論文指導の時間を充分に確保できていたかというと…)ですので、私は心理学研究室の一員として赴任させていただいたことを心よりありがたく思い、感謝する次第です。

 事務局・教室だより

○ 平成19年度の卒業論文、心理学関連修士論文には以下のものがありました。

 <卒業論文>
  伊藤あずさ   「幼児の概念化における非階層的カテゴリーとクロス分類の
            発達的特徴」  
  木山 園子   「新生児マウスにおける母親とバージン雌への選好に及ぼす刺激効果」
  中川 麻美   「Zollner錯視における鋭角過大視仮説の特性の検討」  
  成田 真理   「高校生の進路意思決定における変更プロセスがその満足度に
            及ぼす影響」
  原 萌子    「教職への自己決定性が教師効力感、教師イメージに及ぼす影響
            について」  
  堀内 祐歌   「幼児の自称詞使い分けに見られる発達的変化」
  岸本 茂樹   「大学・学部選択動機と入学後の学業の充実感の関連について」

 <修士論文>
  市岡 真吾   「特性的自己効力感の形成とその役割に関する研究」
  奥澤眞理子   「中・高齢期対人ボランティアの人生にもたらす人間的成熟」
  勝本沙矢香   「新生児を引きつける父親と母親の刺激に関する研究」
  豊川隼平    「ストレス耐性の季節性」
  三木康裕    「注意の補償活動にみられる発達的変化」

○ 湖心会会計報告 (2008.4.1〜2009.3.31)
    前年度繰越金  439,087   会費収入      
                    <収入の部      480,282>
    郵便・通信費   44,212   次年度繰越金   
                    <支出の部      480,282>

○ 同窓会費の納入方法が変更になりました。加入時(大学卒業時)に永年会費として
  5000円を一括徴収しております。この金額は、会を最低限維持していける程度のも
  のです。さらに安定的な運営のため、ご寄付をお寄せ下さい。ご協力のほどよろし
  くお願い申し上げます。

○ 事務局へのご連絡には、返事の受け取り方法(郵便/ファックス/eメール)を
  ご指定の上、いずれかでお知らせ下さい。


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