2013年度学校心理コース卒業論文要約


太田夕貴 愛他行動に対する自己犠牲と自己調整能力の影響について

 誰かに物を貸すという愛他行動において、物がきれいな状態で返却されるか汚い状態で返却されるかという自己犠牲の大小と、貸す相手との親密度の高低がどのように関連するかを幼児、小学生、大学生を対象に検討した。実験の結果、自己犠牲が小さく、親密度が高い場合、愛他行動が起こしやすいことが明らかになった。また、幼児は自己犠牲が大きい場合も親密度が低い場合も他の学年に比べて愛他行動を起こしやすかったことから、幼児の愛他行動には自己犠牲の大小といった状況的要因よりも、幼児の持つ能力の高低といった特性的要因が関連していると考えられた。ゲームや紙芝居を用いた実験の結果から、積極的な愛他行動には、自己抑制と自己主張の2つの側面から成る自己調整能力のうち、自己抑制できることが前提となり、周囲の状況を考慮して自分の主張すべきことや行動すべきことを積極的に表す自己主張ができるかどうかが重要であることが示唆された。



北川千華子 空想の存在に対する幼児の認識と素朴理論ならびに家庭環境との関連

実在しない空想の存在を信じている子どもは数多く存在する。本研究では、空想の存在に対する幼児の認識について、認知的側面と社会的側面から検討することを目的とした。認知的側面として幼児がもつ素朴理論素朴生物学ならびに素朴物理学との関連性を検証した結果、それぞれ一貫した関連は見られなかった。さらに、使用した空想の存在の種類によって関連が異なった。社会的側面として家庭環境との関連性を検証した結果、空想の存在の種類によって親と子の考え方の関連に違いが見られた。これらのことから、空想の存在に対する幼児の認識が、その存在のキャラクター設定の明確さや外見的特徴の認知度などのキャラクター特性に大きく依存する可能性が示唆された。また、空想の存在に対する幼児の認識を規定する要因は、素朴理論や家庭環境のみではなく、それらの要因ならびに他の要因からも影響を受けているのではないかと考えられる。


黒木小春 教育学部生における教職適応に対する自己効力に見られる実習前後の変化
        ―達成経験と内的ワーキングモデルに着目して―


 近年、改めて質の高い教員の養成が求められており、そのためにも既存の教職課程の改善・充実を図ることが重要視されている。その養成段階における大学の重要なカリキュラムとして「教育実習」が組み込まれているが、その実習中に特にどのような経験をすることが、教職に関する自己効力を上昇させるうえで重要になってくるのだろうか。本研究での調査の結果、子どもとのかかわりの中で得た、授業や学級経営についての成功体験が、教職適応に対する自己効力を上昇させることが明らかとなり、そのような経験を多く積むことで、教職に就いた後も適応できずに辞めてしまう教師等を減らすことができるのではないかということが示唆された。


中田明里 教育学部生の教職科目における不適応的学習
       ―学習動機の個人差と授業要因に着目して―

近年、日本の子どもたちの学習への意欲の低さが問題視されている(江川, 2010)。TIMSS(2007)の調査などによると、世界的に見て日本の中学生は学習に対する意欲が低く、学習することが楽しい、日常生活や将来のために役立つと感じる生徒の割合が極端に低い。しかし、成績は世界の中でも上位である。藤澤(2002)の提唱する「ごまかし勉強」を参考に、本研究では、大学生におけるこのような「ごまかし勉強」を「不適応的学習方略」と命名し、自己調整学習(伊藤2007, 2009)に代表される「適応的学習方略」との関連を調べた。本研究で得られた主な結果は、大学生において、不適応的学習方略という学習の方法がかなりの割合で実在しているということ。教職志望度が高く、内発的調整を行う学習者は、学習に対して不適応的学習方略の使用は少ないが、授業の有用性によっては、学習行動が変化し、不適応的学習方略を使用する場合もあるという傾向が見られたということである。



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