初等教育コース 学校心理専攻

学校心理専攻とは

教師になるためには2つの面で専門的な力を身につける必要があります。第1は教科の指導力をたかめることです。第2は児童・生徒のこころを理解して、信頼される関係を築くことです。学校心理専攻はこの2つめの「児童・生徒を深く理解する」専門性を高める専攻です。例えば、学ぶ意欲や何かをやり遂げる意志がどのように生まれるのかとか、どうすれば効果的に学習がすすむのだろうかとか、学級の中で教師と子どもの人間関係をよくするにはどうすればよいのだろうかなど、学ぶときの心と環境の関わりは科学的に探求しなければならない大切な課題であり、この専攻でしっかり学ぶことができます。それだけではなく、生まれてから青年に達するまでの人間の発達の道筋を理解することとか、家庭での家族関係のあり方や、その文化的風土と子どもの発達の関係を理解することなど、子どもを理解することはとても大切な問題です。また自らの進路を決定し、職業を選択することも青年期の重要な課題です。このように、子どものこころを科学的にとらえることによって、現代の子どもをめぐる困難な問題を解決する手がかりをえることができるのです。

「子どもたちのいのちを育てる教師」として生きよう、という選択をした君にとって、この専攻で学べば子どものこころや行動に関する広範囲な問題についてのエキスパートとなることができます。

スタッフ紹介

井上 毅(教授:教育心理学・認知心理学)

記憶や思考やコミュニケーションのしくみを探り、教育における学習の問題を考えてみよう。

友だちと修学旅行の思い出を語り合うときには、さまざまなエピソードを思い出しています。また,本を読んでいるときには、文字や単語や文法の知識を総動員しています。家を出るとき、帰りに郵便局へ寄る用事を頼まれたら、そのことを覚えておくためにも記憶を用いています。このように,私たちの日常生活は、記憶の働きによって支えられています。人間の心の働きのうち、記憶や思考といった、主に知的な側面のしくみを情報処理の考え方にもとづいて研究する学問は、認知心理学と呼ばれています。私のゼミでは、この認知心理学の考え方を基盤にして、記憶や思考やコミュニケーションなどの基礎的な研究を進めるとともに、学校教育における学習の問題や、教育とコンピュータの関係など、関連する幅広いテーマの研究も行っています。

<卒業論文タイトルの例>


渡部雅之(教授:発達心理学)

発達心理学は子どもを知るためにあるのか。育ちへの理解を通して自分を見つめ直そう。

私たちはなぜ、子どもの考えていることがわからないのでしょうか。発達心理学は、大人になるにつれ忘れてしまう、そうした子どもの心を探り出すためにあると思われています。もちろんそれは、間違いではありません。しかし、人の成長について学ぶことの本当の意義は、ほかにあります。かつての自分もそうであった幼児や児童の思いを知ることは、あなた自身がこれまでに歩んできた道筋を確かめ、その意味を理解することなのです。また、これからも一生をかけて成長していく、自分自身の未来を見据える作業でもあります。私のゼミでは、卒論テーマの設定において、各自の関心を最大限に尊重します。それは、自分がなぜその問題に惹かれるのかという内なる問いかけに、とことんこだわってほしいからです。楽しく発達心理学の勉強を進めながら、厳しく自分を見つめ直しましょう。

<卒業論文タイトルの例>


若松養亮(教授:青年心理学・職業心理学)

青年期の心理学は若い皆さんが取り組むことで見えてくることもあります。今の悩みや思いを大切に。

私は、進路選択過程を中心に、中学生から大学生までの青年期を対象とした研究をしています。進路選択は、若者が行う場合、特別な意味と難しさがあります。それは、社会に出た経験がないというだけでなく、自分の人生や社会との関わりに特別な思い入れがあり、しかしそれを「現実」と突き合わせなければならないからです。しかしそれだけに支援が重要であり、学問としても興味深いものです。

青年期に出会ういくつもの課題や問題には、その年代や性別の特質を踏まえると、理解がとても進むことがあります。私のところで卒論を書く人たちは、自分自身もまさに「青年」であり、自分の経験や思いを生かして研究を進め、大きな成果を得ています。あなたも今の悩みや思いを忘れないうちに、青年期の心理学を深めてみませんか。

<卒業論文タイトルの例>


蔵永 瞳(講師:社会心理学)

社会心理学を通して、人と人との関わりについての「なぜ?」の答えを探求しよう。

 私たちは日々、いろいろな人と接しながら生活しています。たとえば、友人とおしゃべりをしているとき、電車やバスで見ず知らずの人と隣り合って座るとき。そんな日常の些細な場面でも、私たちは、意識的に、あるいは無意識的に、周りの人からたくさんの影響を受けています。社会心理学について学ぶことは、自分自身が周りの人からどのような影響を受けているのかを自覚し、その影響力を予測したり、コントロールする方法を見付け出したりすることにつながります。また、自分がどのようにふるまえば、周りの人に良い影響を与えられるのかを考えることにもつながります。私のゼミでは、こういった社会心理学の考え方を基に、人と人とのコミュニケーションや、そこで生じる感情についての研究を行っています。あなたも、日常生活の人との関わりの中で感じた「なぜ?」の答えを一緒に探求してみませんか。









学校心理専攻のカリキュラム

1回生のときには、卒業要件である小学校教員免許のための科目や教養科目、語学や体育の科目が多く、心 理学関係の科目は、心理学の基礎知識を幅広く学ぶ「心理学基礎Ⅰ」「同Ⅱ」と、教職科目である「発達過程の心理学」「学習過程の心理学」だけです。ただ、本学では1回生のうちから2回生以上の人たちと早くから交流ができるので、読むとよい本を薦めてもらえたりできるでしょう。

2回生になると、洋書で心理学の文献を講読する「心理学演習Ⅰ」「同Ⅱ」の他に、心理学の実験や調査を ひととおり実習する「心理学実験法Ⅰ」~「同Ⅳ」を履修することで、次第に心理学の知識と感覚が身についてきます。それと並行して、「測定と評価Ⅰ」「同Ⅱ」という科目で、心理学研究には欠かせない統計学とその用い方を学びます。他にも、学外の先生が夏休みや冬休みに集中的に講義してくださるものを受けられるようになるのも、この学年からです。

3回生になると、必修科目である「教育臨床研究法」を始め、「教育臨床概論」など種々の心理学専門科目 の授業を受けます。それ以外に、本専攻では、3回生の春からいずれかの先生のゼミに配属され、心理学研究の文献の読み方や研究計画の立て方について実践的にトレーニングを受け、実際の実験や調査の実地練習を経験します(科目名は「心理学研究法Ⅰ」、「同Ⅱ」)。自分で努力することも必要な内容ですが、このおかげで、次の年の卒業論文も実に質の高いものが書けるのです。

4回生になると、取らなくてはいけない授業科目は少なくなり、興味や関心に応じて、心理学の専門科目を 受講する一方で、「心理学特定演習」というゼミの科目を履修しながら、卒業論文の製作を手がけます。提出は毎年1月20日ですので、年度の大半の時間を卒業論文の製作に費やすことになります。各自、質の高い研究に打ち込んでいます。2月には、この卒業論文の成績評価をかねた卒論の発表会があり、後輩たちに研究の手本を示し、また3回生以下の人たちは先輩の研究を手本にして、自分の研究テーマを考えます。

学校心理専攻をもっと詳しく・・・・・・

Q: 心理学って面白いですか。人の心が読めるようになるのですか?
A: 人の心は目に見えるものではありません。目に見えないものを学問として扱っていくのですから、たいへんな苦労と人間の叡智が積み重ねられてきました。ですが、だからといって人の心が読めたり見えたりするというわけではありません。いやむしろ、目に見えないものをこのような工夫と努力を重ねて、ここまで掴めた、というところに喜びと達成感を感じています。心理学はまだ100年ちょっとの歴史しかない比較的若い学問ですが、いろいろな理論や仮説が立てられてきたので、人の行動をみると、「もしかしてあの理論が言っているメカニズムがはたらいているのかも」という予想がいくつか立つようになります。人の心が断定的に読めるようにはなりませんが、そのような予想があれこれと立てられて人間を見たり教育に携わったりというのは、知的に面白いものです。
Q: 心理学に関する資格にはどのようなものがありますか。
A: 現在、約15もの資格があります。例えば、「認定心理士」、「臨床心理士」、「学校心理士」、「認定カウンセラー」、「臨床発達心理士」などです。現在、日本心理学会諸学会連合を中心として、多くの資格をまとめた国家資格を創設しようとしています。
Q: 大学で心理学を学べば、資格がとれるのでしょうか。
A: 多くの資格は、残念ながら大学4年間の勉強では取得できません。少なくとも大学院修士課程を修了しておく必要があります。心理学関係の資格には臨床資格が多いので、大学の4年間ではまだまだ勉強が十分ではないのです。医学部を例に取ればわかりやすいでしょう。医学部の教育は6年間です。その間に学生が医学の専門をみっちりと学習するよう授業が計画されています。患者さんの命を預かる職業ですから、それも当然といえるでしょう。心理学の臨床資格も、精神的・身体的・発達的な様々な悩みを持った様々な方に対応できることを保証する資格ですから、それなりの専門的な知識と訓練を受けた人に与えられるのが当然でしょう。ですから、大学4年間に加えて修士課程2年間、計6年間の学習が最低限でも必要になってきます。
滋賀大学大学院教育学研究科の修士課程では、学校教育専修の院生が「学校心理士」の資格を取得できるよう、授業科目を設定しています。すでに何人もの修士修了生が資格を取得しています。
Q: では、全く何の資格も取れないのですか。
A: そうではありません。学部でしっかりと心理学を学べば取得できる資格があります。それが、日本心理学会の出している「認定心理士」です。「認定心理士」は、大学で心理学をきちんと学んだことを保証する資格で、日本心理学会協議会で現在検討中の「基礎資格」になっていく予定です。ですから、心理学を学びたい皆さんは、まず大学で「認定心理士」の資格を取るように努めてください。
滋賀大学の学校心理専攻では、「認定心理士」の資格が取得できるよう、授業科目を用意しています。すでに多くの卒業生が資格を取得しています。大学の4年間で心理学がどんな学問かを理解し、基礎的な知識を習得し、バランスのとれた人格を形成するよう努めてください。
そして、大学での4年間で臨床心理学関係の専門家になりたいという気持ちが強くなったら、その時には大学院に進学してください。それ以外の心理学関係の専門家になりたい方も、もちろんぜひ大学院に進学してください。
Q: 私は、他の専攻にも興味があります。他の専攻(例えば社会や音楽)に入っても、「認定心理士」の資格は取れますか。
A: これまでも数名、そのような方たちはおられました。ただ、実験法や統計学など、かなりの時間とエネルギーを割かなければ、必要とする科目をすべて履修するのは難しいというのが正直なところです。また、肝心の科目が開かれる曜限(何曜日の何時間目かということ)に、自分の専攻の必修科目が開かれていないとも限りません。ですので、よほど計画的に履修のプランを立て、また十分な努力をする心づもりのある方でないと、難しいと思います。
Q: 英語が苦手なのですが・・・
A: 2回生以降、英語論文を読む授業があります。これまでになされてきた研究から最新の情報を収集するためです。できるだけ苦手意識をなくしておいて下さい。
Q: 数学が苦手なのですが・・・
A: 2回生で統計学を勉強します。深い数学の知識が必要なわけではありませんが、Σなどの記号に慣れておいてほしいです。基礎的な勉強はしっかりしておきましょう。
Q: 心理学を学びたいのですが、高校時代からしておくべきことはありますか。
A: 心理学は総合的な学問です。英語や数学のほかにも、論旨の明確な論文を書く力としての国語、子どもや家庭、社会の問題を深く考察していく力としての社会科、論理的な調査/実験計画を立案し、実行できる力としての理科など、高校での科目はすべて深く関わってきます。余分な勉強をする必要は特にありませんので、高校での学習をしっかりと行ってきて下さい。
Q: カウンセリングを勉強したいのですが、どんな授業がありますか。
A: カウンセリングを学び、研究する分野を臨床心理学といいます。臨床心理学関係の授業には、専攻の必修科目である「教育臨床研究法」、さらに選択科目である「教育臨床概論」「教育相談とカウンセリング」、「臨床心理学演習」といった科目が用意されています。
Q: 臨床心理学(カウンセリング)以外にどんなことが学べますか。
A: 学校心理専攻において学ぶことのできる学問領域には、臨床心理学のほかに発達心理学と教育心理学の領域があります。発達心理学は人が生まれて以降に継続的に示す変化である「発達」の意味としくみについて学びます。教育心理学は、学習や記憶や思考の意味としくみについて、さらには学校教育における教授・学習のプロセスに関して学びます。
Q: 学校心理を専攻して小学校の先生になるというのはどういうことですか。
A: 近年の小学校には、例えば以前には見られなかった問題が起こったり、あるいは増えたりしています。教員免許を取る人は、全員がある程度の心理学関係の授業、生徒指導関係の授業は受けるのですが、他の履修科目のかねあいもあって、時間数はあまり十分とは言えません。学校現場では、そのようにして養成されてきた教員志望者が多いなかで、心理学や子どもの内面についてよく知っている教員を求めています。そのようなニーズに対応できる教員、すなわち子どもの問題に特に対応ができたり、あるいは他の教員に対しても相談に乗れたりする教員が求められています。学校心理を専攻した人には、そのような教員の素養が備わっているのです。
Q: 学校心理とは何ですか。ふつうの心理学とどう違うのですか。
A: 学校で起きるさまざまな問題に対して解決を試み、また児童・生徒のより良い成長を支援するための心理学だと考えてください。少し前までの心理学で言えば、「教育心理学」という学問が、最も近いものになります。例えば生徒の反抗や非行、あるいは友人関係のトラブルや悩み、他にも記憶や学習、母子の愛着形成といった、人間の発達や学習を「教育」という視点で捉えて、心理学的に解明する学問です。「学校心理学」とは、まだ新しい学問領域なので捉えにくい面はありますが、教員になって学校で子どもを指導していく上で生じる問題や課題を、これまでの教育心理学の枠組みや概念を発展させて、より深く究明していこうというものです。ただ、だからと言って、新しいことや速効的なノウハウだけを学ぶというわけではなく、本学の学校心理専攻では、心理学の基礎的なところからじっくりと、バランスよく学べるように配慮しています。
Q: 学生さんたちはどんな雰囲気なのですか。
A: 学校心理専攻の人たちは、心理学に興味をもつだけあって、他の人に対する面倒見がよく、1、2回生の皆さんにわからないことがあれば、いつでも迎え入れて教えてくれる雰囲気があります。
研究室の行事は、秋の対面式から始まって、新歓コンパ、12月の納会、2月の追い出しコンパという公式の行事だけでなく、教育実習慰労のコンパや有志による食事会などが和気あいあいの雰囲気のなか、行われているようです。学生の人数が一学年あたり10名程度と少ないので、上下の回生とのつながり・同回生のつながりだけでなく、教員とのつながりも密にでき、コンパなどでもアット・ホームな雰囲気のなか、楽しむことができます。

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