琵琶湖の温暖化




 地球の温暖化が叫ばれていますが,世界や日本各地の気温変動の実態についてNOAA(アメリカ大気海洋局)のデータを用いて調べてみました。また,彦根地方気象台と滋賀県水産試験場の観測データを参考にさせていただき,彦根の気温や琵琶湖の水温の変動についても考察してみました。

 一口に「地球温暖化」といっても,地域や季節による違いがはっきりと見られます。また,よく知られているように大都市ではヒートアイランド化による著しい気温上昇が観測されています。その一方で,最近の50年間に着目すると,月平均気温や年平均気温が下降している地点も決して少なくありません。

 我が国の114地点での1940〜1990年の気温変化のトレンド(回帰直線)を求めてみました。年平均気温(右図)については,大部分の地点で50年間に約0.5℃の上昇が見られ,大都市では1℃以上の上昇となっています。一方,オホーツク海や瀬戸内海沿岸域,および四国の一部では気温が下降している地点もみられます。季節ごとに見ると,冬季や春季において気温上昇が著しく,夏季や秋季にはむしろ気温が降下する傾向がうかがえます。

 彦根地方気象台で観測された年平均気温のトレンドを求めてみると,この100年間に約1℃の気温上昇が見られます。これは,主に最低気温の上昇が著しいためで,夏日や熱帯夜の増加に反映されています。気温は上昇していますが,降水量は100年間に約100mm減少しました。

 温暖化に伴い,びわ湖の水温に何らかの変化が見られるのかについて,滋賀県水産試験場の観測データを用いて調べてみました。びわ湖(北湖)は1回循環湖で,2月〜3月に年間の最低水温が出現し,それがその年の成層期の深層水温となって保存されます。下図は深さ70mにおける各月の水温の約30年間の変化を表したものですが,これを見ると,特に最近の10年間での水温上昇が顕著であり,従来観測された6℃以下の水温が近年には見られないことがわかります。また,びわ湖北湖全体での平均水温を計算したところ,約2℃上昇していて,この熱エネルギーは滋賀県民が1年間に消費するエネルギーに匹敵します。

 このように,びわ湖は確実に温暖化していて,水質や生態系,水循環などへの影響が心配されます。特に通常なら冬季に全層一様となる水温分布が,近年では2月や3月においても弱い成層が残っていることは,いわゆる「びわ湖の深呼吸」を妨げていることになり,びわ湖の物質循環に悪影響を及ぼすものとして危惧されます。



最近の「琵琶湖が危ない」報道について


この内容は、遠藤修一・山下修平・川上委子・奥村康昭(1999):びわ湖における近年の水温上昇について、陸水学雑誌、58巻(223-228頁)に発表しました。


 2003年4月に、「滋賀大学で環境を学ぶ」(滋賀大学環境フォーラム編)という本がつくられました(非売品)。 この本の中に、「地球温暖化とびわ湖」というテーマで執筆しました。 ここから、PDFファイルをダウンロードできます。

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