研究セミナー「質的研究がめざすもの」

 

★日時 : 初日11月26日(土)10:00〜12:00

 

★講師 :サトウタツヤ 氏

(立命館大学総合心理学部教授;日本質的心理学会常任理事)

※画像はサトウ先生ご自身からご提供いただきました。「15年8月撮影(手に持っているのは福島のもも)」とのことです。


★題目:質的研究がめざすもの

−TEA(複線径路等至性アプローチ)とその実習も交えて−

 

★企画の趣旨 :

 青年心理学を研究する者にとって、質的研究の重要性は論を俟たず、それをどのように進めるか、どのように量的研究との両立や相乗効果を得ていくかは、ずっと長い間、課題になっています。
 講師のサトウタツヤ先生は、日本質的心理学会でご活躍の著名な先生ですが、2013年に上梓された『質的心理学の展望』(新曜社)では、たいへん刺激的な論を、しかもこれまでの質的研究の流れを踏まえて、堅実に論じておられます。
 近年ではTEM(Trajectory Equifinality Modeling; 複線径路等至性モデリング)を使ったアプローチTEA(Trajectory Equifinality Approach)でさまざまな著作や論文を執筆しておられます。このセミナーでは前半に質的研究への批判や限界をどのように捉え、それに答えた手法をいかに確立するかについてお話しいただき、後半にはTEM・TEAの話も交えて2時間のセミナーをしていただく予定です。

 

 

★司会・進行 : 松嶋秀明 氏(滋賀県立大学)

 

★予稿集の原稿はこちらから見ることができます。

 

青年期研究2.0 −問題意識と研究デザインのブレーク・スルーとは−

 

★日時:初日11月26日(土)13:00〜14:40

 

★企画の趣旨:

研究を重ねてくると、その事象が次第に理解・解明されてきた感覚をもつ一方、なかなかすっきりとしない感覚がぬぐえないものです。青年はみな、こういう気持ちでいるのだろうか、あてはまらない人たちもそれなりにいるのではないか…。本当にこの変数が効いているのだろうか、本当に効いている変数と相関する“まがい物”を掴まされているのではないだろうか…。もっとすっきりした類型があるのではないか…など。そうしたもどかしい部分を新しい問題意識と研究デザインで打ち破り、「もう一歩上」に行くには、どんな視点や研究デザインが有効なのでしょうか。
 そこでこのラウンドテーブルでは、学位を取得した後も積極的に研究を進めている中堅の会員3名の方々に話題提供をいただき、新たな研究の切り口や暫定的な成果、今後の展望などをお話しいただきます。その方たちが扱っている研究テーマに関心をもつ方はもちろん、そうでない方も自分のテーマに置き換えてお聴きいただくことで、きっと新奇な視点や研究デザインが見えてくることと思います。ご期待いただければと思います。

※タイトルの「2.0」とは、「Web 2.0」などでいう「一段上の新しいバージョン」という意味です。

 

★話題提供者の方々(五十音順):

 

 @岡田 努 氏(金沢大学) −友人関係研究の領域から−

【プロフィール】

 金沢大学人間社会学域人文学類教授,学習院大学博士(心理学)。東京都立大学大学院で学び,1991年3月博士課程満期退学後新潟大学助手・助教授,立教大学助教授を経て,2000年9月より現所属に勤務。
 専門は教育心理学,社会心理学。特に青年期の自己概念と対人関係の発達をテーマに研究を進めている。代表的な著作は,『現代青年の心理学―若者の心の虚像と実像―』(世界思想社, 2007年),『青年期の友人関係と自己―現代青年の友人認知と自己の発達―』(世界思想社, 2010年)など。

 

 

 

 A河野荘子 氏(名古屋大学) −犯罪・非行研究の領域から−

【プロフィール】

 名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授,博士(教育学),臨床心理士。名古屋大学大学院で学び,1998年3月博士課程後期課程満期退学,研究生を1年した後,静岡大学教育学部専任講師,同助教授を経て,2004年4月より現所属に勤務。
 専門は非行・犯罪心理学,思春期・青年期の心理臨床。最近は特に,非行・犯罪者が立ち直っていく心理的プロセスの解明や,共感性・セルフコントロール・時間的展望などをテーマに研究を進めている。代表的な著作は,『犯罪者の立ち直りと犯罪者処遇のパラダイムシフト』(現代人文社,2011年)『コンパクト犯罪心理学―初歩から卒論・修論作成のヒントまで―』(共編著; 北大路書房, 2013年),など。

 

 B平石賢二 氏(名古屋大学) −親子関係研究の領域から−

【プロフィール】

 名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授,博士(教育心理学),臨床心理士,学校心理士。名古屋大学大学院で学び,1990年3月博士課程後期課程満期退学後,名古屋大学教育学部助手,三重大学教育学部助教授を経て,2000年4月より現所属に勤務。
 専門は思春期・青年期の発達と臨床。特に親子関係,家族関係の構造と機能,不登校,包括的スクールカウンセリングに関する研究と実践を進めている。代表的な著作は,『青年期の親子間コミュニケーション』(ナカニシヤ出版,2007年),『改訂版 思春期・青年期のこころ ―かかわりのなかでの発達』
(編著; 北樹出版,2011年)など。

 

★予稿集の原稿はこちらから見ることができます。

 

準備委員会企画講演

 

★日時 : 初日11月26日(土)14:50〜17:00

 

★講演者:ジェームズ・コテ(James Côté)氏(カナダ・ウェスターン・オンタリオ大学)

 

★題目:新しい発達段階としての成人形成期(emerging adulthood)は妥当か

 

★司会者 : 溝上慎一氏(京都大学)

 

★概要 :

ジェームズ・コテ先生をお招きし、「成人形成期」についての標題の講演をしていただきます。成人形成期は、青年期を終えた後に迎えるとされる新しい発達段階で、成人形成期を受け入れることは、青年期とは異なる発達期を自分は研究対象にしているのだという宣言になります。なにより青年心理学会の存在意義にも繋がる大きな問題でもあります。
国際的な情勢では、この10年、あまりその中身を理解することなくこの概念が広く使用されるようになっており、コテ先生の下記の批判的論文はこの流れに大きな警鐘を鳴らしたものとして話題になっています。成人形成期という概念を批判的に理解する機会にしたいと思います。

 

Cote, J. (2014). The dangerous myth of emerging adulthood: An evidence-based critique of a flawed developmental theory. Applied Developmental Science, 18(4), 177-188.→PDFはこちら

 

★プロフィール :

The University of Western Ontario、社会学部の教授。発達社会心理学を専門分野として、アイデンティティにおけるエージェンシーやアイデンティティ資本(identity capital)の研究で知られる研究者です。大学で心理学を学び、大学院では社会学を学ばれたことから、青年心理学者として、若者社会学者として世界的にご活躍されています。元アイデンティティ学会(ISRI:the International Soceity for Reserach on Identity)の会長、国際社会学会の元若者社会学部門の会長。現在はJournal of Adolescenceの副編集長をされています。

 

★予稿集の原稿はこちらから見ることができます。

 

★その他 :

講演を一度聴くだけではなかなか理解するのが難しい概念、ということで去る10月22日に、兵庫教育大学の中間玲子先生が企画・運営された事前勉強会の資料が届きました。大会当日までにご覧いただければと思います。中間先生、また資料を作成してくださった先生方、どうもありがとうございました。


@コテ先生の論文はこちらです。
AEmerging Adulthoodの本の第1章・第2章はこちらです。
B同じく第3章はこちらです。
C同じく第4章はこちらです。
D同じく第5章はこちらです。
E同じく第6章はこちらです。
F同じく第7章はこちらです。

 

 


 

研究委員会企画シンポジウム

 

★日時 : 2日目11月27日(日) 12:45〜14:25(予定)

 

★タイトル: 現代青年の生活時間

−研究委員会共同調査の結果にもとづく検討―

 

★概要 :

現代の青年はどのような日常を送っているのだろうか?“ゆとり世代”と称される現代青年が,実際は余裕もなく,何かに追い立てられるような日々を送っていることが指摘されている。本シンポジウムでは,研究委員会による共同調査をもとに,現代青年の生活時間を明らかにし,そこから見える現代青年の特徴や困難について議論を深めていきたいと考えています。

 

★登壇者 :
○話題提供:坂田浩之 (大阪樟蔭女子大学)

丹羽智美 (四天王寺大学)

○指定討論:佐橋由美 (大阪樟蔭女子大学)

浅岡章一(江戸川大学)
速水 敏彦 (中部大学)


○司会:坂康雅 (和光大学)

 

★予稿集の原稿はこちらから見ることができます。

会員からのエントリーによるプログラム

 

★個人研究発表

○会員個々人の研究発表を45分かけてご発表いただきます。
○第2日目の午前または午後の枠で行います。
○詳細なタイムテーブルはこちらです。

 

★研究発表A(27日・午前中)

@青年期 における「キャラ化」対してパーソナリティが与える影響について ―キャラ化測定尺度の作成―(藤野遼平・大阪大学大学院人間科学研究科)
A同性友人関係における状況に応じた切替―彼ら自身はどのように意味づけているのか―(大谷宗啓・滋賀大学非常勤講師)

★研究発表B(27日・午前中)

@母娘関係が娘のアイデンティティ形成に及ぼす影響−クラスタ分析と伝記分析による検討−(赤木真弓・立教大学現代心理学研究科)
A親への「甘え」と青年期のアイデンティティ形成との関連の検討−甘えタイプ尺度(ATS)による4タイプの視点から−(小林美緒・九州大学大学院人間環境学府、加藤和生 #・九州大学大学院人間環境学研究院)
B女子青年における母親に対する感謝の心理状態の短期縦断的検討(池田幸恭・和洋女子大学)

★研究発表C(27日・午前中)

@リスク回避型モラトリアムのアイデンティティ研究における位置づけ(高坂康雅・和光大学)
A大学生における個人的神話とリスクテイキング行動との関連について(室屋賢士・龍谷大学大学院文学研究科)
B大学生の他者軽視傾向と自己形成、自己変容の志向性(小平英志・日本福祉大学)

★研究発表D(27日・午後)

@高校への学校移行がもたらす心的外傷後成長−レジリエンスとパーソナリティ特性の変化との関連−(飯村周平・中央大学大学院・日本学術振興会特別研究員DC1、宅香菜子 #・オークランド大学心理学部)
A大学受験のとらえ方およびコーピングと自己効力感の関連(堀井順平・愛知教育大学大学院教育学研究科)
Bライフラインチャートが精神的健康に及ぼす影響−介入効果によるパターン分類ならびに性格特性との関連−(高田治樹・立教大学、山口一大・東京大学大学院)

★研究発表E(27日・午後)

@大学生における自己および他者に対する信頼感と社会観の関係(峰尾菜生子・中央大学大学院文学研究科)
A自画像にみる女子大学生の摂食障害傾向(島田友紀・神戸大学大学院人間発達環境学研究科、齊藤誠一・神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
B思春期になぜ自尊心が下がるのか?(加藤弘通・北海道大学大学院教育学研究院、太田正義 #・常葉大学、松下真実子 #・御前崎市立浜岡中学校、三井由里 #・浜松市立中部中学校)

★研究発表F(27日・午後)

@青年期における見捨てられ不安に関する要因とその構造(呉明月・立教大学現代心理学研究科)
A女子大学生の保育実習に関するバーンアウト−養育態度と親への愛着から−(信太寿理・愛知淑徳大学非常勤講師)
B他者へのサポート提供が セルフ・コンパッションに及ぼす影響(千島雄太・筑波大学人間系、菅原大地 #・筑波大学大学院人間総合科学研究科、水野雅之 #・国立精神・神経医療研究センター)

 

★自主シンポジウム

○会員の企画による90分程度のシンポジウムです。
○第2日目の午後2:40〜4:40の枠で行います。

 

日本の青年期発達をどうとらえるか−自立・アイデンティティ・大人指標の観点から−

企画・司会:都筑 学さん(中央大学)
話題提供:畑野 快さん(大阪府立大学)
話題提供:杉村和美さん(広島大学)
話題提供:中間玲子さん(兵庫教育大学)
指定討論:平石賢二さん(名古屋大学)