湖心会会報 第29号 抜粋


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  特集: 〜 この人に聞く 〜
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 2004年度より井深信男先生が滋賀大学理事(総務・企画担当)・副学長に、千原先生が教育学部附属中学校長にご就任され、ご活躍です。また2005年度より、近藤文良先生が付属幼稚園長にご就任予定です。これらの方々に、本学の抱える問題や今後の見通し、抱負などを、渡部がインタビュー形式で伺いました。なお、文中の敬称は省略させて頂きました。


【井深先生】

渡部:副学長になってからの率直なご感想をお聞かせ下さい。
井深:思った以上に忙しいです。かつて学生部長をしていた頃は兼任でしたが、今は専任なので、仕事量が全然違います。
渡部:具体的には、どのようなお仕事をされていますか。
井深:書類の決裁も多いのですが、法人化に伴う仕事増の主は、中期計画実行に伴う業務です。私のもとには、いくつかの部会(評価制度設計部会など)がありますが、これらが各担当の年度課題を抱えています。その目標がどこまで遂行されているかを、絶えずチェックしなければなりません。例えば、評価制度設計部会は教員の個人評価を実施しなければなりませんが、実行までにはいろいろと問題があり、簡単ではありません。でも、6年以内に必ず実行しなければ大学の予算減につながります。それに、役員会、教育研究評議会、経営協議会、その他色々な課題解決のためのワーキング・グループへの出席と主宰、これだけに多くの時間をとられます。私たちのような専任を置くことで、一般の教員は教育・研究に専念できるようになるという意図で制度を作ったのですが、実際には事はそう単純ではなく、大学全体ではみんなより忙しくなってしまいました。
渡部:中期計画を達成する上で、いろいろと問題があるのはわかりましたが、最大の問題は何であるとお考えでしょうか。
井深:われわれ理事や部会に関わっておられる一部の教員と、その他の教員との認識が大きくずれてしまっていることだと思います。7割ほどの教員は法人化以後も大して変わったという意識を持っておられないのじゃないかと感じます。
渡部:だけども、変わらなければ6年後には大きなしっぺ返しが来るのですね。
井深:そうです。だからやらなければならない。
渡部:話は変わりますが、先生は就任された当時、医大との統合を推進したいと仰ってましたが、その後の進展はどうでしょうか。
井深:4大学統合については凍結の状態です。各大学が法人化後の対応に追われているようです。医大も、われわれと同じ思いで統合問題に臨んでいるかといえば、少し姿勢が違うようです。しかし、同じ県内にある大学同士だから、私は医大との統合を推進したいと思うし、期待している先生方も多いと思います。とにかく関係を切らないで、少しずつでも前進したいと思っています。
渡部:ただ、それが来年とか再来年とかという、近い将来のことではなさそうだということでしょうか。
井深:そんな感じです。こちらの思いが強くても、相手のあることですから。
それよりも各大学、今年の6月に16年度分の達成状況を実績報告書として出さなければならない。これに追われています。うちの場合、二百数十項目あるのをなるべく100%に近づけなければならないのです。例えば、女性教員の比率を○%まで引き上げるという具体的な項目もあります。外国人教員の比率を高めるというのもあります。これなど他大学ではあまり見られない目標ですが、困難も多いです。
渡部:最後に、湖心会の皆様へのメッセージをお願いします。
井深:関口先生ご退官後、皆さんとお会いできる機会があまりなかったのが残念です。
皆さんには、ご自分の出身大学がどうなっていくのかを、絶えず関心を持って見守って欲しいと思います。また今後とも、いろいろな面でご支援、応援して頂けるとありがたいです。
渡部:ありがとうございました。

【千原先生】

渡部:1年間附属中学校長を務められたご感想をお願いします。
千原:忙しいです。職員会議や校内研究会などを主催することになっていますので。特に附属ですから、指導要領の改訂などに先んじて、先進的に研究活動を行っています。さらに、附属全体の問題なのですが、慢性的な超過勤務状態にあります。教育活動だから、画一的に時間を管理できないという面もあるのですが、一方で労働基準法に従って労働条件を守らなければならず、頭の痛い問題です。
渡部:昨年法人化されたことで生じた、変化や問題などはありますか。
千原:先の超過勤務問題などが最たるものです。国家公務員の時よりも一層きちんと労働管理をしなければならなくなったはずですが、現実はなかなかうまくいきません。大学の理事もそうした状況をまだ十分に理解して頂いていなかったようで、超過勤務手当に関わる財政事情はホットな問題です。ただ、全般的に法人化前とそう大きく状況が変わったという印象はありません。むしろ今後は、もっと積極的にいろいろ変えていかねばならないのではないかと感じています。
渡部:ほかに、大きな問題点としてお感じになっていることはありますか。
千原:2つあります。1つは、大学全体の将来計画に附属もきちんと位置づけるということです。実際、大学の中期計画にも附属の事項は少ししか取り上げられていません。もう1つは、地域との関係です。地域と良好な関係を作り上げると同時に、子どもたちを取り巻く環境を地域の方々といっしょに整備していく必要があります。附属の先生方は大変お忙しくて、そのための人手を十分に割くことができないのですが、今後の課題として重要であると思っています。
渡部:最後に、湖心会の皆様へメッセージをお願いします。
千原:附属のあり方が改めて問われようとしています。特に財政面などから附属不要論もありますが、学校長になってみて、研究校や実習校としての附属の果たすべき役割は依然大きいと感じています。今後とも、ご理解とご支援をお願いします。
渡部:ありがとうございました。


【近藤先生】

渡部:まず,附属幼稚園長に選出されたご感想をお聞かせ下さい。
近藤:正直言って、驚きました。私に勤まるのだろうかと。
渡部:附属幼稚園についてどのようなイメージをお持ちですか。
近藤:教育の面でも研究の面でもあまり幼稚園に関わったことをやってこなかったので、具体的にこうしたことをしていきたいというようなイメージはないのですが、心理学に関わってきたから、自己の形成、自律性の形成という面で、児童期・青年期の前段階としての幼児期の重要性に焦点をあて、これから新しく学び直すつもりで、研究的な視点、実践的な可能性を探っていきたいと思います。
渡部:今後の心理学教室と附属幼稚園との関係について、お考えをお聞かせ下さい。
近藤:心理の卒業生数人が附属幼稚園の教諭として立派な仕事をされていることからみても、専門性を発揮して貢献できるでしょう。また、学生にとっても、実践の中から研究の視点を取り出してくることも期待できます。私がいるということで、園に来てもらいやすくなるといいですね。大いなる交流を望んでいます。
渡部:湖心会の会員の方々は、小・中学校の教員の方が多いのですが、同じ教育実践の分野に身を置くようになったという意味から、皆さんへのメッセージはありますか。
近藤:『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』というロバート・フルガムの本がありますが、ライフサイクル全体の中で幼稚園教育は重要なものがあります。ですから教育の問題で悩んだら、もう一度幼児教育の問題を探って欲しいと思います。特にそれは、家庭教育に集中的に現れていると考えます。そういう意味からも、もっともっと幼稚園教育に目を向けて、関心を持って欲しいと思います。幼小連携の問題などもありますし、これから皆さんといっしょに考えていけたら嬉しいです。
渡部:ありがとうございました。


事務局・教室だより

○ 平成15年度の卒業論文、心理学関連修士論文には以下のものがありました。

<卒業論文>
 記憶方略としてのタイピングが文章記憶に及ぼす影響                                 浅間良恒
 理想自己・現実自己のズレの捉え方と、高校生活の順調さの関係について                    梅景千春
 高齢者の空間的視点取得能力にみられる特徴について                                戎 謙博
 シベリアハムスターの季節性と豊環境,光周期経験,ストレスが体発達に及ぼす効果              小嶋正悟
児童の自己開示に対する教師のリーダ―シップ行動と児童のスクールモラールの交互作用について      齊藤美穂
5,6歳児の生理的状態より生じる欲求の理解における発達的差異                          持原由理
高学年児童の空間的視点取得能力の特徴について                                    矢吹雄介

<修士論文>
 子育て期の親の人格的成熟とソーシャルサポートの関連                                一色正恵
 児童のクラス環境の認知と目標志向性に関する研究                                  小西佳矢
 児童期における好意をもつ同姓の友人に対する感情と行動の関連                         堂ケ崎道世
 養育者の自尊感情が育児ストレスの認知と心理的well-beingに与える効果                    戸本さやか
 友人関係ストレスにおけるソーシャル・サポート及びコーピングと適応                        野坂弘子
 中学生の学習意欲に及ぼす手段保有感および手段目的信念について                       野村昌弘
 園生活における幼児のストレス反応に関する研究                                    宮塚江理

 【お詫び】
  「堂ケ崎道世」様のお名前を、お送りした会報の中で、誤って「堂ケ崎道代」としてしまいました。
  堂ケ崎様にはご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫びいたします。
  会員の皆様には、誠にお手数ですが、ご訂正をお願いいたします。


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