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公民科学習指導要領の新旧比較(左:平成元年、右:平成十年版)

 

第1 現代社会  第2 倫理  第3 政治・経済  

 

第1款 目  標

 

 

広い視野に立って、現代の社会について理解を深めさせるとともに、人間としての在り方生き方についての自覚を育て、民主的、平和的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う。

 

広い視野に立って,現代の社会について主体的に考察させ,理解を深めさせるとともに,人間としての在り方生き方についての自覚を育て,民主的,平和的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う。

 

 

第2款 各 科 目

第1 現代社会                                                    TOP

1 目標
 人間の尊重と科学的な探究の精神に基づいて、広い視野に立って、現代の社会と人間についての理解を深めさせ、現代社会の基本的な問題に対する判断力の基礎を培うとともに自ら人間としての在り方生き方について考える力を養い、良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。

2 内容
(1) 現代社会における人間と文化
 現代世界における文化の多様性・複合性に着目させるとともに日本の生活文化と伝統について理解させ、異なった文化への理解を深めさせる。また、現代社会の特質とそこに生きる人間について理解させるとともに、現代における青年期の課題について自覚を深めさせる。
 ア 風土と生活
 様々な民族から成る世界には、それぞれの風土や宗教などに根ざした多様な文化が存在し、その中で人間生活が営まれていることを理解させるとともに、文化交流について考えさせ、文化の共通性にも気付かせる。
 イ 日本の生活文化と伝統
 日本の生活文化と伝統を理解させ、それらが行動の基盤になっていることを考えさせることにより自己理解を深めさせるとともに、人生における宗教や芸術の意義について考えさせる。
 ウ 現代社会の特質と青年期の課題
 大衆社会、高齢化社会、情報化社会など現代社会の特質を理解させ、それとの関連で学ぶことの意義及び青年期における自己形成の課題について認識を深めさせ、進路の選択と併せてよく生きることと生きがいの追求について自覚を深めさせる。

(2) 環境と人間生活
 環境と人間生活とのかかわりについて理解させるとともに、環境にどうかかわて生きるかについて考えさせる。
 ア 環境と生活
 科学技術の発達、資源・エネルギーの需給、都市化の進展及び人口の動きなどを理解させ、環境と生活とのかかわりについて考えさせる。
 イ 環境保全と倫理
 人間が生態系の中で生存していることに着目させて公害の防止など環境保全の重要性を理解させ、自然と人間の調和の在り方について考えさせるとともに、科学的なものの考え方と哲学的なものの考え方について理解させ、諸問題への対処の仕方について考えさせる。

(3) 現代の政治・経済と人間
 国民の生活が経済や政治と密接にかかわっていることを理解させるとともに、国民生活の向上と民主化の進展について考えさせ、民主社会の倫理について自覚を深めさせる。
 ア 地域社会の変化と住民の生活
 地域社会の変化に着目させ、地方自治と住民福祉について理解させ、住民の生活と政治・経済の動きとのかかわりについて考えさせるとともに、地域社会の一員としての自覚を深めさせる。
 イ 国民福祉と政府の経済活動
 現代の市場と企業、技術革新などと情報化や国際化の進展について理解させ、我が国の経済社会の変化について考えさせる。また、国民所得の動き、産業構造の変化、雇用問題と労働関係、消費者保護と契約、社会保障の充実、社会資本の整備などについての理解を深めさせるとともに、公的部門の役割と租税の意義について考えさせ、国民生活の向上と福祉の増大に対する認識を深めさせる。
 ウ 日本国憲法と民主政治
 基本的人件の保障と法の支配、国民主権と議会制民主主義、平和主義と我が国の安全についての理解を深めさせ、日本国憲法の基本的原則について国民生活とのかかわりから認識を深めさせる。また、世界の主な政治体制の動向に触れながら、世論形成と政治参加の意義について理解させるとともに、民主政治における個人と国家について考えさせる。
 エ 民主社会の倫理
 生命の尊重、自由・権利と責任・義務、人間の尊厳と平等などについて考えさせ、民主社会において自ら生きる倫理について自覚を深めさせる。

(4) 国際社会と人類の課題
 国際的な相互依存関係の緊密化に伴う国際社会の変化及び日本経済の国際化について理解させ、国際秩序の形成・維持と平和の実現及び生活の向上と福祉の増大が人類の課題であることを把握させるとともに、これからの国際社会における日本の役割及び日本人の生き方について考えさせる。
 ア 国際政治の変化
 国家主権と国際法、国際連合と集団安全保障、国際社会の多極化と国際的相互依存関係の深化など国際社会の特質と動向について理解させるとともに、我が国の安全保障と防衛について考えさせる。
 イ 国際経済の動向と国際協力
 経済における世界的な相互依存関係の緊密化、南北問題などの世界的な課題、日本経済の国際的なかかわりなどについて理解させ、世界の経済体制の動向に触れながら、国際協力の意義について考えさせる。
 ウ 人類の課題
 人権、領土などに関する国際法、地域紛争と国際秩序の形成・維持、人種・民族問題、核兵器と軍縮問題など国際平和を推進する上での課題について理解させ、これからの国際社会における人類の連帯の意識を認識させ、国際社会における日本の役割及び日本人の生き方について考えさせる。

3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科及び道徳並びに公民科に属する他の科目、地理歴史科、家庭科及び特別活動などとの関連を図るとともに、項目相互の関連に留意しながら、全体としてのまとまりを工夫し、特定の事項だけに偏らないようにすること。
イ 社会的事象は相互に関連し合っていることに留意し、できるだけ相互的な視点から理解させ考えさせるとともに、生徒が主体的に自己の生き方にかかわって考えるよう学習指導の展開を工夫すること。
ウ 科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。
エ 的確な資料に基づいて、社会的事象に対する客観的かつ公正なものの見方や考え方を育成するとともに、学び方の習得を図ること。その際、統計などの資料の見方やその意味、情報の検索や処理の仕方、簡単な社会調査の方法などについて、具体的、実際的に指導するように留意すること。
オ 政治及び宗教に関する事項の取扱いについては、教育基本法第8条及び第9条の規定に基づき、適切に行うこと。

(2) 内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については、次の事項に留意するものとする。
(ア) 「青年期における自己形成の課題」については、青年期の心理的、社会的な問題、適応と個性の形成などについて理解させるとともに、生涯にわたる学習の意義について考えさせるようにすること。
(イ) 「進路の選択」については、自己の人生と職業生活及び余暇について考えさせるよう工夫すること。
イ 内容の(2)については、自然環境とともに社会環境も取り上げ、人間生活とのかかわりについて考えさせること。
ウ 内容の(3)については、民主政治の展開と経済発展とのかかわりにも気付かせるようにすること。
エ 内容の(4)については、単なる制度や機構に関する細かな事柄の学習に終わらないようにするとともに、国際政治と経済とのかかわりに関心をもたせるようにすること。

1 目   標
 人間の尊重と科学的な探究の精神に基づいて,広い視野に立って,現代の社会と人間についての理解を深めさせ,現代社会の基本的な問題について主体的に考え公正に判断するとともに自ら人間としての在り方生き方について考える力の基礎を養い,良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。

2 内   容
(1) 現代に生きる私たちの課題
 現代社会の諸問題について自己とのかかわりに着目して課題を設け,倫理,社会,文化,政治,経済など様々な観点から追究する学習を通して,現代社会に対する関心を高め,いかに生きるかを主体的に考えることの大切さを自覚させる。
(2) 現代の社会と人間としての在り方生き方
 現代社会について多様な角度から理解させるとともに,青年期の意義,経済活動の在り方,政治参加,民主社会の倫理,国際社会における日本の果たすべき役割などについて自己とのかかわりに着目して考えさせる。
ア 現代の社会生活と青年
 大衆化,少子高齢化,高度情報化,国際化など現代社会の特質と社会生活の変化について理解させる。また,生涯における青年期の意義と自己形成の課題について考えさせるとともに,自己実現と職業生活,社会参加に触れながら,現代社会における青年の生き方について自覚を深めさせる。
イ 現代の経済社会と経済活動の在り方
 現代の経済社会における技術革新と産業構造の変化,企業の働き,公的部門の役割と租税,金融機関の働き,雇用と労働問題,公害の防止と環境保全について理解させるとともに,個人と企業の経済活動における社会的責任について考えさせる。
ウ 現代の民主政治と民主社会の倫理
 基本的人権の保障と法の支配,国民主権と議会制民主主義,平和主義と我が国の安全について理解を深めさせ,日本国憲法の基本的原則について国民生活とのかかわりから認識を深めさせるとともに,世論形成と政治参加の意義について理解させ,民主政治における個人と国家について考えさせる。また,生命の尊重,自由・権利と責任・義務,人間の尊厳と平等,法と規範などについて考えさせ,民主社会において自ら生きる倫理について自覚を深めさせる。
エ 国際社会の動向と日本の果たすべき役割
 世界の主な国の政治や経済の動向に触れながら,人権,国家主権,領土に関する国際法の意義,人種・民族問題,核兵器と軍縮問題,我が国の安全保障と防衛,資本主義経済と社会主義経済の変容,貿易の拡大と経済摩擦,南北問題について理解させ,国際平和や国際協力の必要性及び国際組織の役割について認識させるとともに,国際社会における日本の果たすべき役割及び日本人の生き方について考えさせる。

3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科及び道徳並びに公民科に属する他の科目,地理歴史科,家庭科及び特別活動などとの関連を図るとともに,項目相互の関連に留意しながら,全体としてのまとまりを工夫し,特定の事項だけに偏らないようにすること。
イ 社会的事象は相互に関連し合っていることに留意し,社会的事象に対する関心をもって多様な角度から考えさせるとともに,できるだけ総合的にとらえることができるようにすること。また,生徒が自己の生き方にかかわって主体的に考えるよう学習指導の展開を工夫すること。
ウ 1の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし,細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。
エ 的確な資料に基づいて,社会的事象に対する客観的かつ公正なものの見方や考え方を育成するとともに,学び方の習得を図ること。その際,統計などの資料の見方やその意味,情報の検索や処理の仕方,簡単な社会調査の方法などについて指導するよう留意すること。また,学習の過程で考えたことや学習の成果を適切に表現させるよう留意すること。
オ 政治及び宗教に関する事項の取扱いについては,教育基本法第8条及び第9条の規定に基づき,適切に行うこと。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,次の事項に留意すること。
(ア) 内容の(1)は,この科目の導入としての性格をもつものであることに留意し,課題を追究する学習に当たっては,高度な内容に深入りすることは避け,この科目の学習の動機付けや学び方の習得に重点を置いた工夫を行うこと。
(イ) 現代社会の諸問題については,地球環境問題,資源・エネルギー問題,科学技術の発達と生命の問題,日常生活と宗教や芸術とのかかわり,豊かな生活と福祉社会などから,地域や学校,生徒の実態に応じて,二つ程度を選択して取り上げ主体的に課題を追究させるよう工夫すること。
イ 内容の(2)については,次の事項に留意すること。
(ア) アの大衆化,少子高齢化,高度情報化,国際化については,これらのうちから生徒の実態等に応じて二つ程度を選択して学習させること。生涯における青年期の意義と自己形成の課題については,生涯にわたる学習の意義についても考えさせること。また,職業生活,社会参加については,男女が対等な構成員であることに留意して触れること。現代社会における青年の生き方については,日本の生活文化や伝統とのかかわりについても考えさせること。
(イ) ウについては,地方自治にも触れながら政治と生活との関連について認識を深めさせること。また,民主社会において自ら生きる倫理については,個人と個人,個人と社会との関係に着目して考えさせること。
(ウ) エについては,制度や機構に関する細かな事柄の学習にならないようにすること。

 

第2 倫理                                     TOP

1 目標
 人間尊重の精神に基づいて、青年期における自己形成と人間としての在り方生き方について理解と思索を深めさせるとともに、人格の形成に努める実戦的意欲を高め、良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。

2 内容
(1) 青年期と人間としての在り方生き方
 生涯において青年期がもつ意義を理解させるとともに、先哲の基本的な考え方を手掛かりとして、人間の存在や価値について思索を深めさせる。
 ア 青年期の課題と自己形成
 人間性の特質、適応と個性の形成など生涯において青年期がもつ意義と課題を理解させ、現代社会における青年の生き方について考えさせる。
 イ 人間としての自覚
 自己探求と倫理的自覚、人生における哲学、宗教、芸術のもつ意義などについて理解させ、人間としての在り方生き方を考えさせる。

(2) 現代社会と倫理
 現代社会の特質について理解させ、現代に生きる人間の倫理的な課題について思索を深めさせる。
 ア 現代社会の特質と人間
 現代の人間像に触れながら、核家族化、高齢化、情報化、国際化などの現代社会の特質への理解を深め、人間と社会のかかわりを考えさせる。
 イ 現代社会を生きる倫理
 人間の尊厳と生命への畏敬、自然や科学技術と人間のかかわり、社会参加と奉仕、自己実現と幸福などについての理解を深め、民主社会を形成する人間としての在り方生き方を考えさせる。

(3) 国際化と日本人としての自覚
 日本の思想や文化の特色について理解させ、国際社会における主体性のある日本人としての在り方生き方について思索を深めさせる。
 ア 日本の風土と日本人の考え方
 日本人にみられる人間観、自然観、宗教観を日本の風土とのかかわりで考えさせる。
 イ 外来思想の受容と日本の伝統
 仏教、儒教、西洋の思想や文化など受容と独自な思想の形成にみられる日本の伝統について考えさせる。
 ウ 世界の中の日本人
 人類の福祉と国際平和の確立、地球と人類社会などについて理解させ、国際社会における日本人としての在り方生き方を考えさせる。

3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科及び道徳並びに公民科に属する他の科目、地理歴史科及び特別活動などとの関連を図るとともに、全体としてのまとまりを工夫し、特定の事項だけに偏らないようにすること。
イ 先哲の基本的な考え方を取り上げるに当たっては、内容と関連が深く生徒の発達や学習段階に適した代表的な先哲やその言説を精選し、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。また、生徒自らが人生観、世界観を確立するための手掛かりを得させるよう様々な工夫を行うこと。
ウ 政治及び宗教に関する事項の取扱いについては、教育基本法第8条及び第9条の規定に基づき、適切に行うこと。

(2) 内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については、この科目全体の導入部分としての性格をもつものであることに留意し、以後の学習への意欲を喚起すること。
イ 内容の(1)のイについては、ギリシアの思想、キリスト教、仏教、儒教などの基本的な考え方を代表する先哲の思想を取り上げる程度とすること。
ウ 内容の(2)については、美術作品などを引用して現代の人間像を紹介するなど工夫し、併せて現代社会を生きるための倫理に関する代表的な先哲の思想を手掛かりに学習すること。
エ 内容の(3)については、古来の日本人の考え方や代表的な日本の先哲の思想を手掛かりに学習すること。

1 目   標
 人間尊重の精神に基づいて,青年期における自己形成と人間としての在り方生き方について理解と思索を深めさせるとともに,人格の形成に努める実践的意欲を高め,生きる主体としての自己の確立を促し,良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。

2 内   容
(1) 青年期の課題と人間としての在り方生き方
 自己の生きる課題とのかかわりにおいて,青年期の意義と課題を理解させるとともに,先哲の基本的な考え方を手掛かりとして,人間の存在や価値について思索を深めさせる。
ア 青年期の課題と自己形成
 自らの体験や悩みを振り返ることを通して,青年期の意義と課題を理解させ,豊かな自己形成に向けて,他者と共に生きる自己の生き方について考えさせる。
イ 人間としての自覚
 人生における哲学,宗教,芸術のもつ意義などについて理解させ,人間の存在や価値にかかわる基本的な課題を探究させることを通して,人間としての在り方生き方について考えを深めさせる。
ウ 国際社会に生きる日本人としての自覚
 日本人にみられる人間観,自然観,宗教観などの特質について,我が国の風土や伝統,外来思想の受容に触れながら,自己とのかかわりにおいて理解させ,国際社会に生きる主体性のある日本人としての在り方生き方について自覚を深めさせる。
(2) 現代と倫理
 現代に生きる人間の倫理的な課題について思索を深めさせ,自己の生き方の確立を促すとともに,よりよい国家・社会を形成し,国際社会に主体的に貢献しようとする人間としての在り方生き方について自覚を深めさせる。
ア 現代の特質と倫理的課題
 現代の倫理的課題を大局的にとらえさせ,今日に生きる人間の課題について理解させる。
イ 現代に生きる人間の倫理
 人間の尊厳と生命への畏敬,自然や科学技術と人間とのかかわり,民主社会における人間の在り方,社会参加と奉仕,自己実現と幸福などについて,倫理的な見方や考え方を身に付けさせ,他者と共に生きる自己の生き方にかかわる課題として考えを深めさせる。
ウ 現代の諸課題と倫理
 生命,環境,家族・地域社会,情報社会,世界の様々な文化の理解,人類の福祉のそれぞれにおける倫理的課題を,自己の課題とつなげて追究させ,現代に生きる人間としての在り方生き方について自覚を深めさせる。

3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科及び道徳並びに公民科に属する他の科目,地理歴史科及び特別活動などとの関連を図るとともに,全体としてのまとまりを工夫し,特定の事項だけに偏らないようにすること。
イ 先哲の基本的な考え方を取り上げるに当たっては,内容と関連が深く生徒の発達や学習段階に適した代表的な先哲の言説等を精選し,細かな事柄や高度な事項・事柄には深入りしないこと。また,生徒自らが人生観,世界観を確立するための手掛かりを得させるよう様々な工夫を行うこと。
ウ 政治及び宗教に関する事項の取扱いについては,教育基本法第8条及び第9条の規定に基づき,適切に行うこと。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,次の事項に留意すること。
(ア) アについては,この科目の導入としての性格をもつものであることに留意し,生徒自身の課題とかかわらせて考えさせ,以後の学習への意欲を喚起すること。
(イ) イについては,ギリシアの思想,キリスト教,仏教,儒教などの基本的な考え方を代表する先哲の思想,芸術家とその作品を,観点を明確にして取り上げるなど工夫すること。
(ウ) ウについては,古来の日本人の考え方や代表的な日本の先哲の思想を手掛かりにして,自己の課題として学習させること。
イ 内容の(2)については,次の事項に留意すること。
(ア) アについては,イ及びウへの導入として,現代の倫理的課題について概観し,問題意識をもたせる程度にとどめること。
(イ) イについては,倫理的な見方や考え方を身に付けさせ,自己の課題として考えを深めていく主体的な学習への意欲を喚起すること。
(ウ) ウについては,イの学習を基礎として,学校や生徒の実態等に応じて課題を選択し,主体的に追究する学習を行うよう工夫すること。その際,生命又は環境のいずれか,家族・地域社会又は情報社会のいずれか,世界の様々な文化の理解又は人類の福祉のいずれかにおける倫理的課題をそれぞれ選択するものとする。

 

 

第3 政治・経済                   TOP

1 目標
 広い視野に立って、民主主義の本質に関する理解を深めさせ、現代における政治、経済、国際関係などについて客観的に理解させるとともにそれらに関する諸課題について考察させ、良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。

2 内容
(1) 現代の世界と日本
 世界の情勢を概観して、国際関係を動かす基礎となる事柄や国際社会における日本の地位と役割について理解させるとともに、現代の世界と日本にかかわる基本的な課題について総合的に考察させる。
 ア 国際社会の変容と日本
 第二次世界大戦を契機とする国際社会の変容、地理的、文化的諸条件を含む国際環境とのかかわりでみた日本の近代化の特質について理解させるとともに、世界の情勢や日本の国際的地位の変化について考察させる。
 イ 国際社会の動向と課題
 科学技術の発達に伴う政治・経済・文化にわたる国際交流の拡大と相互依存関係の進化の状況、発展途上国の現状と動向、先進国と発展途上国との関係などについて理解させるとともに、環境、資源、人口など人類全体にかかわる基本的な課題について考察せる。

(2) 現代の政治と民主社会
 基本的人権と議会制民主主義を尊重し擁護することの意義や民主政治の本質について深く理解させるとともに、政治の在り方について広い視野から考察させる。
 ア 民主政治の基本原理
 政治社会の特質、国民の参政の意義、人権保障の発達、法の支配の原則、権利と義務の関係などについて理解させるとともに、議会制民主主義の本質と望ましい政治の在り方について世界の主な政治体制を比較しつつ考察させる。
 イ 日本国憲法と民主政治
 日本国憲法の基本的性格、基本的人権の保障及び国会、内閣、裁判所、地方自治などの機構と機能について理解させるとともに、政党政治と選挙、行政機能の拡大と民主化、世論と現代政治の課題などについて考察させる。
 ウ 国際政治と日本
 国際政治の特質と動向、人権、領土などに関する国際法の意義と役割、国際連合と国際協力、我が国の防衛を含む安全保障の問題、国際平和と人類の福祉に寄与する日本の地位と役割について理解させるとともに、軍縮問題、人種・民族問題など国際政治の諸課題について考察させる。

(3) 現代の経済と国民生活
 経済生活の急激な変化と発展、日本経済の国際化、現代経済の機能と特質及びその問題点について理解させるとともに、日本及び世界経済の抱える諸課題について考察させる。
 ア 経済社会の変容と経済体制
 19世紀の自由主義経済から経済政策の役割が大きくなった現代に至る資本主義経済の発展と変容、国民経済における家計、企業の働きと政府の役割、社会主義経済とその現状について理解させるとともに、現代経済の基本的性格について考察させる。
 イ 現代経済の仕組み
 市場経済の仕組み、資金の循環と金融機関の働き、財政の仕組みと租税の意義・役割、経済成長政策と景気変動対策について理解させるとともに、それらの現状と課題について考察させる。
 ウ 現代経済と福祉の向上
 産業構造及び人口構成並びに労働条件の変化、経済の発展と福祉の向上との関連について理解させるとともに、食料と農業、資源・エネルギー、環境保全と公害防止、物価、消費者保護、中小企業問題、労使関係と労働市場、社会保障と社会福祉など、経済生活に関する諸課題について考察させる。
 エ 国民経済と国際経済
 貿易と国際収支の現状や為替相場の仕組み、国際協調の必要性や国際経済機関の役割、経済協力の動向について理解させるとともに、経済摩擦問題や国際経済における日本の役割について考察させる。

3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科、公民科に属する他の科目、地理歴史科及び家庭科などとの関連を図るとともに、全体としてのまとまりを工夫し、特定の事項だけに偏らないようにすること。
イ 科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。また、客観的な資料と関連させて具体的に理解させるとともに、政治や経済についての公正かつ客観的な見方や考え方を深めさせること。
ウ 現在の状況と課題を理解させる指導に当たっては、現在の我が国で実現されている法的、制度的な面についての基本的な理解の上に立って、理論と現実の相互関連を理解させること。
エ 内容と関連のある現代の諸問題や時事的事象の取扱いについては、教育基本法第8条の規定に基づき、適切に行うこと。

(2) 内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については、この科目全体の導入部分としての性格をもつものであることに留意し、基本的な事柄の理解と考察を通じて以後の学習の手掛かりを得させるようにすること。
イ 内容の(2)については、主権者としての政治に対する関心を高め、主体的な参政の在り方について理解させること。

 

1 目   標
 広い視野に立って,民主主義の本質に関する理解を深めさせ,現代における政治,経済,国際関係などについて客観的に理解させるとともに,それらに関する諸課題について主体的に考察させ,公正な判断力を養い,良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。

2 内   容
(1) 現代の政治
 現代の日本の政治及び国際政治の動向について関心を高め,基本的人権と議会制民主主義を尊重し擁護することの意義を理解させるとともに,民主政治の本質について探究させ,政治についての基本的な見方や考え方を身に付けさせる。
ア 民主政治の基本原理と日本国憲法
 日本国憲法の基本的性格と国会,内閣,裁判所などの政治機構を概観し,政治と法の機能,人権保障と法の支配,権利と義務の関係,議会制民主主義について理解させ,民主政治の本質や現代政治の特質について探究させるとともに,政党政治や選挙などに着目して,望ましい政治の在り方及び主権者としての参政の在り方について考察させる。
イ 現代の国際政治
 国際政治の動向,人権,国家主権,領土などに関する国際法の意義,国際連合をはじめとする国際機構の役割,我が国の防衛を含む安全保障の問題について理解させ,国際政治の特質や国際紛争の諸要因について探究させるとともに,国際平和と人類の福祉に寄与する日本の役割について考察させる。
(2) 現代の経済
 現代の日本経済及び世界経済の動向について関心を高め,日本経済の国際化をはじめとする経済生活の変化,現代経済の機能について理解させるとともに,その特質を探究させ,経済についての基本的な見方や考え方を身に付けさせる。
ア 経済社会の変容と現代経済の仕組み
 資本主義経済及び社会主義経済の変容,国民経済における家計,企業,政府の役割,市場経済の機能と限界,物価の動き,経済成長と景気変動,財政の仕組みと働き及び租税の意義と役割,資金の循環と金融機関の働きについて理解させ,現代経済の特質について探究させるとともに,経済活動の在り方と福祉の向上との関連を考察させる。
イ 国民経済と国際経済
 貿易の意義と国際収支の現状,為替相場の仕組み,国際協調の必要性や国際経済機関の役割について理解させ,国際経済の特質について探究させるとともに,国際経済における日本の役割について考察させる。
(3) 現代社会の諸課題
 政治や経済に関する基本的な理解を踏まえ,現代の政治や経済の諸課題を追究する学習を行い,望ましい解決の在り方について考察させる。
ア 現代日本の政治や経済の諸課題
 大きな政府と小さな政府,少子高齢社会と社会保障,住民生活と地方自治,情報化の進展と市民生活,労使関係と労働市場,産業構造の変化と中小企業,消費者問題と消費者保護,公害防止と環境保全,農業と食料問題などについて,政治と経済とを関連させて考察させる。
イ 国際社会の政治や経済の諸課題
 地球環境問題,核兵器と軍縮,国際経済格差の是正と国際協力,経済摩擦と外交,人種・民族問題,国際社会における日本の立場と役割などについて,政治と経済とを関連させて考察させる。

3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科,公民科に属する他の科目,地理歴史科及び家庭科などとの関連を図るとともに,全体としてのまとまりを工夫し,特定の事項だけに偏らないようにすること。
イ 1の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし,細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。また,客観的な資料と関連させて政治や経済の諸課題を考察させるとともに,政治や経済についての公正かつ客観的な見方や考え方を深めさせること。
ウ 政治や経済について考察した過程や結果について適切に表現する能力と態度を育てるようにすること。
エ 内容と関連のある現代の諸問題や時事的事象の取扱いについては,教育基本法第8条の規定に基づき,適切に行うこと。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮すること。
ア 内容の(1)のアの民主政治の本質については,世界の主な政治体制と関連させて扱うこと。また,現代政治の特質については,世論形成などについて具体的事例を取り上げて扱い,主権者としての政治に対する関心を高めることに留意すること。
イ 内容の(2)のアについては,マクロ経済の観点を中心に扱うこと。
ウ 内容の(3)については,この科目のまとめとしての性格をもつものであることに留意し,内容の(1)及び(2)で学習した成果を生かし,地域や学校,生徒の実態等に応じて,ア及びイのそれぞれにおいて課題を選択して追究させること。その際,政治や経済の基本的な概念や理論の理解の上に立って,事実に基づいて多様な角度から考察し,理論と現実との相互関連を理解させること。

 

第3款 各科目における内容の取扱い

 指導の全般を通じて、情報を主体的に活用する学習活動を重視するとともに、作業的、体験的な学習を取り入れるよう配慮するものとする。そのため、各種の統計、年鑑、白書、新聞、読み物、その他の資料に親しみ、活用すること、観察、見学及び調査・研究したことを発表したり報告書にまとめたりすることなど様々な学習活動を取り入れるとともに、教育機器などの有効な利用を工夫して学習効果を上げるようにする必要がある。

 各科目の指導に当たっては,情報を主体的に活用する学習活動を重視するとともに,作業的,体験的な学習を取り入れるよう配慮するものとする。そのため,各種の統計,年鑑,白書,新聞,読み物その他の資料に親しみ,活用すること,観察,見学及び調査・研究したことを発表したり報告書にまとめたりすることなど様々な学習活動を取り入れるとともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用して学習の効果を高めるよう工夫するものとする。