学習指導要領における世界史の目標の変遷 資料のページ
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目 標 |
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1947(1947) |
東洋史(はじめのことば*1) 東洋独自の文化がどのようにして起り、それがどのような発展をとげ、また他の文化と交渉してどのように変化したか、ことに近世にいたって西洋の近代文化の影響を受けてどんなに変わったかを明らかにし、もって今日の実状を正しく認識せしむる。 |
西洋史(はじめのことば*2) 今日の文明の由来を知り、現代文明を理解することにある。即ち、人類がいついかにしてこの地上に現れ、そのつくり上げた文明がどのようにして発展して今日に至ったかを、さまざまの土地において、かつ時の流れに従って認識すること。 |
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1949 (1949) |
1949年「高等学校社会科日本史、世界史の学習指導について」 イ、社会科の一般目標に合致すること ロ、現代文化の歴史的背景を理解することにより現代社会の諸問題の意義を認識すること。 ハ、歴史の発展の必然性を理解させること。 ニ、現代社会の生活文化を総合的、発展的に理解すること。 ホ、歴史が進歩への発展であることを理解することにより社会発展に対する自己の責任と情熱とをいだかしめること。 ヘ、歴史の時代観を理解させること。 ト、各時代各社会に共通する人間性のは握につとめさせること。 チ、事実を合理的、批判的に取り扱う態度と技能を育てること。 リ、史実の理解を通し、現在の社会並びに経済、政治の問題解決に必要な能力を発達させること。 |
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2 |
1951(1951) |
世界史の特殊目標 1、世界的な広い視野に立って、国際協力を推し進める精神を育て、世界平和への努力を惜しまない人類愛を養うこと。 2、世界史の発展と動向とを、くりかえし理解することによって、歴史的思考力を訓練し、現代社会の諸問題を理性的に批判し、正確に判断する能力を養うこと。 3、世界史における時代概念を的確に理解することによって、現在社会の歴史的地位をはあくし、正しい社会観と、健康な常識とを育成すること。 4、世界における古典や名著に親しんで、その読解力をたかめ、また、文学・美術・音楽などの作品を通じて、芸術愛好の心情を養い、豊かな人間性を養うこと。 5、現代日本の世界史的地位を理解することにより、わが民族使命を自覚し、あわせて、個人の努力の価値をも認識すること。 6、調査・見学・研究等の実践を通じて、研究に対する誠実な態度と、資料を歴史的に整理する能力とを育て、討論・発表に必要な技能と、公民的素質とを養うこと。 |
3 |
1955(1956) |
社会科世界史 1、世界史の発展を科学的、系統的に理解することによって、歴史的思考力を育て、現代社会の諸問題を、世界史的立場から、客観的に批判する能力と態度とを養う。 2、世界の諸民族・諸国家の発展には、普遍的、共通的な傾向があることに着眼させるとともに、普遍性を基礎とした特殊性があることを理解させる。 3、世界史における各時代を、総合的、発展的に考察することによって、現代社会、特に現代アジアの歴史的地位を明らかにする。 4、社会と文化が各時代の民衆や個人の努力の集積によって進歩してきたことを、その生き生きとした過程を通して理解し、歴史の発展における人々の努力の価値を認識させる。 5、世界の文化を、それが生まれた社会の事情と関連させながら理解し、文学・美術・音楽などのすぐれた作品に親しむ態度を養う。 6、現代日本の世界史的地位を理解することによって、日本民族の果たすべき役割を自覚させる。 7、国際協力を正しくおし進める精神を養うとともに、世界平和を確立し、人類の幸福を増進しようとする意欲と態度とを養う。 8、調査・見学・研究などの学習活動を通じて、資料を歴史的に理解する能力を育て、また発表や討議に必要な技能と態度とを養う。 |
4 |
1960(1963) |
世界史A 1、世界史の発展に関する基本的事項を系統的に理解させ、現代社会の歴史的背景をはあくさせて歴史的思考力をつちかい、民主的な社会の発展に寄与する態度とそれに必要な能力を養う。 2、世界史の発展を理解させ、各時代の性格を明らかにし、その歴史的意義を考察させる。 3、人類の歴史の発展には、民族、国家組織、地域などによるそれぞれの特殊性やそれらを通ずる普遍性があり、また、その底には共通な人間性のあることを理解させる。 4、各時代における社会と文化は、それぞれの時代における人々の努力の集積によって発展してきたことを理解させ、歴史の発展における個人や集団の役割について認識させる。 5、世界の学問、思想、宗教、芸術などの文化遺産を、それらが生み出された社会の背景や文化の交流の史実を通して理解させ、これを尊重して、新しい文化を創造し発展させようとする意欲を高める。 6、国際社会において日本人の果たすべき役割について認識させ、国民的自覚を高め、国際協力を進め、世界の平和を確立し、人類の福祉を増進しようとする態度を養う。 7、資料なども利用し、史実を科学的に理解する能力を育て、また、現代社会の諸問題を世界史的視野から客観的に判断する能力と態度を養う。 |
世界史B 1、世界史の発展に関する基本的事項を系統的に理解させるとともに、現代社会の歴史的背景をはあくさせ、特に政治、経済、社会、文化などの関連について総合的に考察させることによって、歴史的思考力を深め、民主的な社会の発展に寄与する態度とそれに必要な能力を養う。 2、世界史の発展を理解させ、各時代の性格を明らかにし、その歴史的意義を考察させる。 3、人類の歴史の発展には、民族、国家組織、地域などによるそれぞれの特殊性やそれらを通ずる普遍性があり、また、その底には共通な人間性のあることを理解させる。 4、各時代における社会と文化は、それぞれの時代における人々の努力の集積によって発展してきたことを理解させ、歴史の発展における個人や集団の役割について認識させる。 5、世界の学問、思想、宗教、芸術などの文化遺産を、それらが生み出された社会の背景や文化の交流の史実を通して理解させ、これを尊重して、新しい文化を創造し発展させようとする意欲を高める。 6、国際社会において日本人の果たすべき役割について認識させ、国民的自覚を高め、国際協力を進め、世界の平和を確立し、人類の福祉を増進しようとする態度を養う。 7、資料なども利用し、史実を科学的に理解する能力を育て、また、現代社会の諸問題を世界史的視野から客観的に判断する能力と態度を養う。 |
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5 |
1970(1973) |
世界史 1、世界の歴史に関する基本的事項を理解させ、歴史的思考力をつちかい、世界の歴史の流れや現代世界の形成の歴史的過程を把握させて、国際社会に生きる日本人としての自覚を深め、民主的な国家・社会の発展に寄与する態度と能力を養う。 2、世界の歴史における各地域、民族、社会、国家の発展には、それぞれの特殊性やそれらを通ずる普遍性があることを理解させるとともに、世界の歴史におけるわが国の地位と役割を考察させて、国際協調の精神を養う。 3、各時代における人々の努力の集積によって、社会、文化などが発展してきたことを理解させ、歴史の発展における個人や集団の役割について認識させる。 4、世界のおもな文化遺産を、それらが生み出された社会の背景や文化交流の史実を通して理解させ、これを尊重して、さらに新しい文化を創造し発展させようとする意欲を高める。 5、資料をも利用し、史実を実証的、科学的に理解する能力を育て、歴史的事象を多角的に考察し、公正に判断する態度を養う。 |
6 |
1978(1982) |
世界史 世界の歴史に関する基本的事項を理解させ、歴史的思考力を培うとともに、現代世界形成の歴史的過程と世界の歴史における各文化圏の特色を把握させて、国際社会に生きる日本人としての資質を養う。 |
7 |
1989(1994) |
世界史A 現代世界の形成の歴史的過程について、近現代史を中心に理解させ、世界諸国相互の関連を多角的に考察させることによって、歴史的思考力を培い、国際社会に生きる日本人としての自覚と資質を養う。 |
世界史B 現代世界の形成の歴史的過程と世界の歴史における各文化圏の特色について理解させ、文化の多様性・複合性や相互交流を広い視野から考察させることによって、歴史的思考力を培い、国際社会に生きる日本人としての自覚と資質を養う。 |
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8 |
1998(2003) |
世界史A 近現代史を中心とする世界の歴史を,我が国の歴史と関連付けながら理解させ,人類の課題を多角的に考察させることによって,歴史的思考力を培い,国際社会に主体的に生きる日本人としての自覚と資質を養う。 |
世界史B 世界の歴史の大きな枠組みと流れを,我が国の歴史と関連付けながら理解させ,文化の多様性と現代世界の特質を広い視野から考察させることによって,歴史的思考力を培い,国際社会に主体的に生きる日本人としての自覚と資質を養う。 |
* 1 東洋史では5つの単元、それら単元毎に目標が記述されている。科目全体の目標については「はじめのことば」という前文で説明されているが、目標としてまとめているところはない。そこで、「はじめのことば」から、要点を述べた文章を抜粋した。
* 2 西洋史でも6つの単元が配列され、目標の記述は東洋史と同様である。そこで、「はじめのことば」から、要点を述べた文章を抜粋した。
※改訂年度の( )内は実施年度
出典は各年度版の学習指導要領で、以下の通り。
文部省『学習指導要領(東洋史編、西洋史編)』(1947年7月16日)
文部省「高等学校社会科日本史、世界史の学習指導について」(1949年)
文部省『中学校・高等学校学習指導要領社会科編Vab(試案)』(1952年3月20日)
文部省『高等学校学習指導要領社会科編』(1955年12月26日)
文部省『高等学校学習指導要領社会科編』(1960年10月13日)
文部省『高等学校学習指導要領社会科編』(1970年10月15日)
文部省『高等学校学習指導要領社会科編』(1978年8月30日)
文部省『高等学校学習指導要領地理歴史科編』(1989年3月15日)
文部省『高等学校学習指導要領地理歴史科編』(1999年3月29日)