Q:心理学に関する資格にはどのようなものがありますか。
A:現在、約15もの資格があります。例えば、「認定心理士」、「臨床心理士」、「学校心理士」、「認定カウンセラー」、「臨床発達心理士」などです。現在、日本心理学会協議会を中心として、多くの資格をまとめた統一資格を創設しようとしています。これができると、基礎資格(学部卒レベル)、専門資格(大学院修士号取得レベル)、高度資格(大学院博士課程修了レベル)の3段階に整理されます。
Q:大学で心理学を学べば、資格がとれるのでしょうか。
A:多くの資格は、残念ながら大学4年間の勉強では取得できません。少なくとも大学院修士課程を修了しておく必要があります。心理学関係の資格には、臨床資格が多いので、大学の4年間ではまだまだ勉強が十分ではないのです。医学部を例に取ればわかりやすいでしょう。医学部の教育は6年間です。その間に学生が医学の専門をみっちりと学習するよう授業が計画されています。患者さんの命を預かる職業ですから、それも当然といえるでしょう。心理学の臨床資格も、精神的・身体的・発達的な様々な悩みを持った様々な方に対応できることを保証する資格ですから、それなりの専門的な知識と訓練を受けた人に与えられるのが当然でしょう。ですから、大学4年間に加えて修士課程2年間、計6年間の学習が最低限でも必要になってきます。
滋賀大学大学院修士課程では、学校教育専修の院生が「学校心理士」の資格を取得できるよう、授業科目を設定しています。すでに何人もの修士修了生が資格を取得しています。
Q:では、全く何の資格も取れないのですか。
A:悲観する必要はありません。学部でしっかりと心理学を学べば取得できる資格があります。それが、日本心理学会の出している「認定心理士」です。「認定心理士」は、大学で心理学をきちんと学んだことを保証する資格で、日本心理学会協議会で現在検討中の「基礎資格」になっていく予定です。ですから、心理学を学びたい皆さんは、まず
大学で「認定心理士」の資格を取るように努めてください。
滋賀大学の学校心理コースでは、「認定心理士」の資格が取得できるよう、授業科目を設定しています。すでに多くの卒業生が資格を取得しています。大学の4年間で心理学がどんな学問かを理解し、基礎的な知識を習得し、バランスのとれた人格を形成するよう努めてください。
そして、大学での4年間で臨床心理学関係の専門家になりたいという気持ちが強くなったら、その時には大学院に進学してください。それ以外の心理学関係の専門家になりたい方も、もちろんぜひ大学院に進学してください。
Q:私は、他のコースにも興味があります。他のコース(例えば社会や音楽)に入っても、「認定心理士」の資格は取れますか。
A:これまでも数名、そのような方たちはおられました。ただ、実験法や統計学など、かなりの時間とエネルギーを割かなければ、必要とする科目をすべて履修するのは難しいというのが正直なところです。また、肝心の科目が開かれる曜限(何曜日の何時間目かということ)に、自分のコースの必修科目が開かれていないとも限りません。ですので、よほど計画的に履修のプランを立て、また十分な努力をする心づもりのある方でないと、難しいと思います。
Q:どんなカリキュラムで、どのような授業を受けながら進むのですか。
1回生のときには、卒業要件である小学校教員免許のための科目や教養科目、語学や体育の科目が多く、心理学関係の科目は、心理学の基礎知識を幅広く学ぶ「学校心理学基礎」「基礎心理学」と、教職科目である「発達過程の心理学」「学習過程の心理学」だけです。ただ、本学では1回生のうちから2回生以上の人たちと早くから交流ができるので、読むとよい本を薦めてもらえたりできるでしょう。
2回生になると、洋書で心理学の文献を講読する「心理学演習T」「同U」の他に、心理学の実験や調査をひととおり実習する「心理学実験T」、「同U」、「同V」を履修することで、次第に心理学の知識と感覚が身についてきます。それと並行して、「測定と評価T」「同U」という科目で、心理学研究には欠かせない統計学とその用い方を学びます。他にも、学外の先生が夏休みや冬休みに集中的に講義してくださるものを受けられるようになるのも、この学年からです。
3回生になると、必修科目である「教育臨床概論」、「教育臨床研究法」を始め(これを2回生で受ける年もあります)、種々の心理学専門科目の授業を受けます。それ以外に、本コースでは、3回生の春からいずれかの先生のゼミに配属され、心理学研究の文献の読み方や研究計画の立て方を実践的にトレーニングされ、この年度の後半を使って、卒論の予備研究とも言うべき「特殊実験論文」を製作します(科目名は「心理学研究法T」、「同U」)。かなりの労力を必要とするカリキュラムですが、このおかげで、次の年の卒業論文も実に質の高いものが書けるのです。
4回生になると、取らなくてはいけない授業科目は少なくなり、興味や関心に応じて、心理学の専門科目を受講する一方で、「心理学特定演習」というゼミの科目を履修しながら、卒業論文の製作を手がけます。提出は毎年1月20日ですので、年度の大半の時間を卒業論文の製作に費やすことになります。各自、前年度の特殊実験論文を下敷きに、またそのときの経験や教訓を生かして、質の高い研究に打ち込んでいます。2月には、この卒業論文の成績評価をかねた卒論の発表会があり、後輩たちに研究の手本を示し、また3回生以下の人たちは先輩の研究を手本にして、自分の研究テーマを考えます。
Q:英語が苦手なのですが…
A:2回生以降、英語論文を読む授業が増えます。これまでになされてきた研究から最新の情報を収集するためです。できるだけ苦手意識をなくしておいて下さい。
Q:数学が苦手なのですが…
A:2回生で統計学を勉強します。深い数学の知識が必要なわけではありませんが、Σなどの記号に慣れておいてほしいです。基礎的な勉強はしっかりしておきましょう。
Q:心理学を学びたいのですが、高校時代からしておくべきことはありますか。
A:心理学は総合的な学問です。英語や数学のほかにも、論旨の明確な論文を書く力としての国語、子どもや家庭、社会の問題を深く考察していく力としての社会科、論理的な調査/実験計画を立案し、実行できる力としての理科など、高校での科目はすべて深く関わってきます。余分な勉強をする必要は特にありませんので、高校での学習をしっかりと行ってきて下さい。
Q:カウンセリングを勉強したいのですが、どんな授業がありますか。
A:カウンセリングを行う分野を臨床心理学といいます。臨床心理学関係の授業には、コースの必修科目である「教育臨床概論」と「教育臨床研究法」、さらに選択科目である「教育相談とカウンセリング」、「臨床心理学演習」といった科目が用意されています。
Q:臨床心理学(カウンセリング)以外にどんなことが学べますか。
A:学校心理コースの専門科目(心理学関係の科目のこと)には、臨床心理学のほかに発達心理学と教育心理学の領域があります。発達心理学は「発達心理学」、「発達心理学演習」などの授業を通して、発達の意味としくみについて学びます。教育心理学は、「教育心理学」、「教育心理学演習」、「認知学習論」、「学習心理学」など学習や記憶の意味としくみについて学びます。
Q:学校心理を専攻して小学校の先生になるというのはどういうことですか。
A:近年の小学校には、例えば以前には見られなかった問題が起こったり、あるいは増えたりしています。教員免許を取る人は、全員がある程度の心理学関係の授業、生徒指導関係の授業は受けるのですが、他の履修科目のかねあいもあって、時間数はあまり十分とは言えません。学校現場では、そのようにして養成されてきた教員志望者が多いなかで、心理学や子どもの内面についてよく知っている教員を求めています。そのようなニーズに対応できる教員、すなわち子どもの問題に特に対応ができたり、あるいは他の教員に対しても相談に乗れたりする教員が求められています。学校心理を専攻した人には、そのような教員の素養が備わっているのです。
Q:学校心理とは何ですか。ふつうの心理学とどう違うのですか。
A:学校で起きるさまざまな問題に対して解決を試み、また児童・生徒のより良い成長を支援するための心理学だと考えてください。少し前までの心理学で言えば、「教育心理学」という学問が、最も近いものになります。例えば生徒の反抗や非行、あるいは友人関係のトラブルや悩み、他にも記憶や学習、母子の愛着形成といった、人間の発達や学習を「教育」という視点で捉えて、心理学的に解明する学問です。「学校心理学」とは、まだ新しい学問領域なので捉えにくい面はありますが、教員になって学校で子どもを指導していく上で生じる問題や課題を、これまでの教育心理学の枠組みや概念を発展させて、より深く究明していこうというものです。ただ、だからと言って、新しいことや速効的なノウハウだけを学ぶというわけではなく、本学の学校心理コースでは、心理学の基礎的なところからじっくりと、バランスよく学べるように配慮しています。
Q:学生さんたちはどんな雰囲気なのですか。
A:学校心理コースの学生の控え室は、人文棟の2階にあります。いつも誰かしら学生がいて、勉強したり、レポートを書いたり、おしゃべりをしたりしています。3、4回生がいることが多いですから、1、2回生の皆さんはわからないことがあれば、いつでも聞ける体制にあると思います。
研究室の行事は、秋の対面式から始まって、新歓コンパ、12月の納会、2月の追い出しコンパという公式の行事だけでなく、有志によるコンパや鍋パーティ、ラーメン屋さんツアーなどが和気あいあいの雰囲気のなか、行われているようです。学生の人数が一学年あたり6〜12名と少ないので、上下の回生とのつながり・同学年のつながりだけでなく、教員とのつながりも密にでき、コンパなどでもアット・ホームな雰囲気のなか、楽しむことができます。
Q:学校心理コースを卒業すると、どんな進路に進みやすいのですか。
A:まず教員です。(他の回答のところでも書いていますが)現代の学校現場では、これまでの経験や常識では対応が難しい問題や課題が多く、子どもの内面や行動についてより深く学んだ人材が求められているのです。実際、卒業前に試験に1回で合格し、教員に採用される人も多く、平成17年度では11名の卒業生のうち3名が正式採用され、5名が講師として、この春から働いています。
次に、心理学の知識と素養を生かした他の進路です。例えば平成13年度は、家庭裁判所の調査官に現役で合格した人が1名、卒業した年に合格した人が1名います。
他にも自治体の公務員や県内外の企業を目指し、内定をもらう人たちが少なくありません。これまでの例では、県内の市や町の役所、銀行等の金融機関、ソフトウェア会社などです。こうした事業所も、心理学と教育について学んできた人材には、いろいろな面で期待してくれているようです。また本コースでの卒論等の作成にあたってコンピュータが使えるようになる人が多いため、そうした力量が買ってもらえることもあるようです。
★この「学校心理コース」についてもっと知りたいという人は、次のような手だてがあります。
(1)オープン・キャンパスの機会に訪れる
毎年8月初旬に、大津市平津の教育学部キャンパスで開かれます。
コースごとに紹介をしたり、問い合わせに答えたりする時間帯が設けてありますので、是非いらしてみてください。
毎年、@教員からのコース紹介 A学生からのコース紹介 Bコース紹介のビデオ上映 C研究室・実験室ツアー D資格や授業内容についての個別相談 を行っています。
(2)教員のホームページを見る
現在、若松と渡部の両教官がホームページを開設しています。講義科目の概要を記したページなどもありますので、このページでは得られなかった情報が得られると思います。このページの、スタッフ名の右にある「HP」のところをクリックしてください。
(3)研究室を直接訪ねる
オープンキャンパス以外の機会でも、大学の研究室を訪ねてくださって、かまいません。学校心理コースの教官の研究室は、人文棟(地図はこちら)2階の東寄りのエリアにまとまってあります。さしあたっては、若松研究室(212室)を訪ねてくだされば、ご案内致します。なお土曜・日曜は居りませんし、建物もロックされて入ることができません。ご訪問に応じられる日もありますので、次項にありますメールアドレス、もしくは電話(077-537-7770)をいただければ、可能かどうかお答え致します。
(4)メールを出してみる
「遠隔地なので、そうそう簡単に行けない」という方は、メールにてご相談くださってもかまいません。ここでも、さしあたり若松が承ります。「wakamatu@sue.shiga-u.ac.jp」まで、メールを出してみてください。