本学教職大学院の学生6名が、令和8年3月5日から3月11日までの1週間、台湾・高雄において海外連携校実習を実施しました。現地の小学校や大学を訪問し、バイリンガル教育の実践や最新の教育研究に触れるとともに、附属学校において実際に授業を行う貴重な機会を得ました。
 本研修を通して、参加学生は日本と台湾の教育の共通点・相違点を体感し、今後の教育実践につながる多くの示唆を得ることができました。
 また、現地では多くの場面で温かく迎えていただき、台湾の人々が日本に対して関心を持ち、親しみをもって接してくださっていることを実感しました。訪問先の学校や大学をはじめ、さまざまな場面で心のこもった対応をしていただき、参加者にとって非常に印象深い経験となりました。
 本研修で実施した主な行程について、以下に紹介します

①バイリンガル教育の視察

 3月6日(金)は高雄市のDa-Hua小学校を訪問しました。英語を「教科」としてではなく、学習や生活の中で活用するEMI(English as a Medium of Instruction)による教育実践を視察しました。
 授業では、物語性のある活動や実際の道具(トランシーバーなど)を用いた学習が展開され、児童は楽しみながら自然に英語を使用していました。英語は特別な学習対象ではなく、「日常の一部」として位置づけられており、学校行事や他教科とも連動した教育が行われている点が特徴的でした。

 また、保護者の積極的な学校参画や、学校独自のカリキュラムを推進できる制度的背景も、日本との大きな違いとして印象に残りました。

②高雄師範大学での講義

 

 3月9日(月)、高雄師範大学において、多文化社会における教育や、学習者の認知に関する研究についての講義を受けました。本講義は、高雄師範大学の陳志成教授と台湾大学博士課程の学生であるPing-Hung Chenさんによって行われました。
 特に印象的であったのは、文化的背景の違いが学習理解に与える影響についての研究です。講義では、アイトラッキング技術を用いて、問題解決時の視線の動きを分析し、教材の文脈が理解のしやすさに影響を与えることが示されました。
 自分にとって身近な文化的文脈では理解が進みやすい一方で、見慣れない文脈は認知的な負荷が高まることが明らかにされていました。また、そのような課題が深い思考を促す可能性も示唆されており、教材の在り方について新たな視点を得ることができました。
 この講義を通して、日本において前提とされがちな「共通の文化」を見直し、多様な背景をもつ子どもたちに対応した授業設計の重要性を学びました。

③ 附属小学校での授業実践

 3月10日(火)に附属小学校において、学生自身が授業を実施しました。音楽や体育の授業を通して、日本の文化を取り入れた活動を行い、現地の児童と交流しました。
 言語が十分に通じない中での授業は、言葉に頼らない指導の重要性を実感する機会となりました。ジェスチャーや視覚的支援、活動そのものの魅力によって、子どもたちの主体的な参加が促されることを実感しました。

 さらに、実習後には昼食を交えながら担当の先生方との省察会が行われ、授業のねらいや展開について互いの感想や気づきを共有することで、自身の実践を多角的に振り返る貴重な機会となりました。
 また、音楽やスポーツは言語の壁を越えて子ども同士をつなぐ力を持つことを実感し、「子どもが学びに向かう姿勢」は国を超えて共通していることを体験的に学びました。

④研修のまとめ

  「自分の目で見たことは真実である」と言われるように、本研修に参加した学生の多くが、台湾の教育を実際に自分の目で見て、肌で感じたいという思いをもって現地に赴きました。その経験は、知識として得るだけでは決して得られない、確かな実感を伴う学びとなりました。

 本研修では、日本と台湾の教育制度や文化の違いを比較するだけでなく、教育の本質的な共通点にも気づくことができました。
 一方で、台湾の柔軟なカリキュラムや多文化を前提とした教育実践は、日本の教育を見直す新たな視点を提供してくれました。また、現地での交流を通して、台湾の人々の温かさや日本への関心の高さに触れたことも、大きな学びの一つとなりました。訪問先では丁寧で心のこもった対応をしていただき、参加者からは「これほどまでに歓迎していただけるとは思っていなかった」と驚きの声も聞かれました。こうした経験は、教育的な学びにとどまらず、国際理解や人と人とのつながりの大切さを実感する機会となりました。
 参加学生からは、
「英語は教科ではなく日常であるという考え方が印象に残った」
「言葉が通じなくても、音楽や運動で子どもとつながることができた」
「文化的背景の違いが学びに影響することを実感した」
といった声が聞かれました。また、
「子どもたちの楽しそうな姿から教師のやりがいを再認識した」
「海外での実体験が、自分の教育観を大きく広げた」
という振り返りからも、本研修が参加者一人ひとりにとって大きな学びの機会となったことがうかがえます。
 今回得られた経験や学びは、今後日本の教育現場において実践へと還元され、子どもたちの学びの充実へとつながっていくことが期待されます。

  

(文責)教育学系 篠原雅史