一緒に若者の心に迫ってみませんか

「教育」心理学への思い

あなたのバック・グラウンドはと問われれば、「それは教育心理学です」と答えます。この答えには、まず「教育」への思いが込められています。ご存じのように、教育には問題が山積しています。私が学部の1、2年生の頃は、今も研究テーマとしている進路選択のテーマ以外に、当時「最盛期」であった管理主義教育やいじめに問題意識を持っていました。それは今でも、生徒指導関係の講義につながっています。ただ、生徒指導のための特別な指導があることも否定はしませんが、やはり日頃の授業もわかりやすく、面白くすることが、生徒から信頼され、授業に前向きに取り組ませる基本であると考え、授業研究がまず重要であると考えています。
 また、上にも書いたように、教育心理学の研究であるからには、1回の研究では無理だとしても、一連の研究の流れのなかで、何らかの示唆を教育に対して与えられるものでなければならないと考えています。教育に対する問題意識である以上、何らかの゛願い″がその根底にあるはずで、研究者自身が取り上げているテーマに対して、「別に(現状から)どう変わろうとどうでもいい」と思っているとしたら、「じゃああなたはなんのためにその研究をしたの?」と問いつめたくなります。だから、その゛願い″があって研究をするわけですから、やはり明らかにしたことやそこからなされる考察は、ひいては「その問題を解決・改善するには、このことがヒントになるのではないか」ということがひとつでも言える研究でなくてはならないと思うわけです。
 さらに、教育心理学を学んでいるからには、「相手にわかりやすく伝えること」にこだわりを持ちたいと考えています。「教育」とはつまるところ、話を聞かせる相手にこちらの話を理解させ、説得することだと思うからです。教育が行われる局面を扱った心理学を学んでいるからには、「どうやったらよりわかりやすくなるか」を常に念頭に置き、心がけたいものです。こういうことを公言すると、「じゃあ、おまえの授業はさぞかしわかりやすいんだろうな」と言われそうで、怖いのですが。

 

なぜ、キャリアの研究か

私の一番の専門は、進路・キャリアに関することです。進路選択、進路指導といった、学校教育にとても関連が深いテーマです。
 なぜ、「キャリア」なのでしょうか。まず第1は、「子どもが未来を考え、選ぶ」「そこに適応するために変わっていく」ということが「教育」そのものだからです。高校受験や大学受験では「いかにランクの高いところに合格するか」ばかりが取り沙汰されていますが、ランクの高い学校が必然的にあなたに幸せや充実感をくれるわけではありません。そこに合格すると嬉しいかもしれませんが、合格はスタートであってゴールではありません。「名門」といわれる学校に入ったものの、それを鼻にかけたり、それが足かせになったりして、決して素敵な成長を遂げていない人を私は多く見てきました。確かに受験にとって成績は大切ですが、それ以外にも「自分はどういうところに入学したら幸せになれるのか」をよく考え、目標が決まったらそのために努力をし、そして入学後にも目標を見失うことなく、打ち込んでいくという若者の姿はたいへん美しく、また貴重な成長の機会となります。職業にしても同じです。名のある会社に入ることがイコール幸せではありません。いずれにしても、「教育」は、やがてはその学校を卒業し、社会に役立ち、また個人としても成長し、充実感を感じられる大人になるための変化の機会であり、手段です。つまり「受けた教育の総決算」が「進路を選ぶことなのです。
 第2には、進路選択は人生でとても大きな問題解決の機会です。職業でいえば、無数にある業種・職種、また企業からどうやって人は「これだ!」と決められるのでしょう? その過程には、大いなる勘違いも、間違いも、また偶然の作用もありますが、その過程こそが研究の対象としてたいへん面白く、また教育の対象としても支援しがいのある課題です。もちろん、どんな進路を選んだら幸せになれるかという問いには、正解はありません。むしろ、「正解にしていく」という側面が大きいのが進路選択です。とくに職業選択は、言うなればみんなが素人。だけれどもみんなが結局は選べてしまう。不思議ですねえ。
 キャリアのなかでも「職業・労働」は、人を大きく惹きつけてやまない営みです。職場体験に出かけた中学生が目を輝かせて学校に戻ってくる姿は、今や全国のどこでもよく見かけます。「一生遊んで暮らせるお金があったら、働くことを辞めるか?」という問いはよくありますが、「それでも働きたい」という人は案外多いのではないでしょうか。確かに現代の労働は、過酷で、また仕事に就きにくく、ストレスも多いことがふつうです。ですが反面、自分が輝いていたい、他人の役に立ちたい、という人もまた、多いのですね。そう、仕事は生計を立てる手段だけでなく、世の中の他の人たちとつながる手段でもあり、また自分の生きがいを見つける場でもあります。このような、職業を中心とした「生き方」「人生での役割の果たし方」を「キャリア」といいます。学校の先生になる人はもちろん、そうでない人も、「キャリア」について研究してみませんか?

学生による卒論・修論の題目一覧

 ここでは、若松研に所属した学生さんたちがしあげた、卒業論文や修士論文の題目を挙げておきます。学校心理専攻を考えている受験生、研究テーマを考えている3回生、あるいはM1生の方にとって参考になれば幸いです。

 

1995 (平成7)年度
教育学部生の教職に対する意識の経時的変化 −その要因の探索的検討− (古川津世志)

 

1996(平成8)年度
授業場面における子どもの発言行動を抑制する要因の検討 (宍戸 玲)
歴史分野における啓発的経験と興味との関連について (水谷真理子)
出生順位による性格特性の差異について −親の養育態度との関連にも注目して− (村井靖子)

 

1997(平成9)年度
掛け算公式に統一した解法の教授活動が児童の割合文章課題の理解に及ぼす効果 (笹山 晃)
教育学部生の教職志望に影響を及ぼす要因は何か (松永麻理)

 

1998(平成8)年度…在外研究による不在のため、指導生はいませんでした。

 

1999 (平成11)年度
学校風土と友人・教師関係が中学生の学校適応感に及ぼす影響について (笹山 晃・修論)
中学生の定期試験前のストレスに対するコーピングとソーシャルサポートの効果 (竹島芙紗子)

 

2000(平成12)年度
性格における理想と現実のズレの捉え方と対人関係及び充実感との関連 (木村知美)
対人恐怖的心性と過去の辛い経験との関係について−加害的・被害的自己意識の側面に及ぼす性役割観の影響力に注目して− (水谷佳代)
タイプA性格傾向とストレスを感じる学級風土 (吉岡 葵)

 

2001(平成13)年度
教科の違いや目標意識が達成の原因帰属と後続の学習行動に及ぼす影響について (川初祥生)
中学校への移行にともなう教師のあり方の違いが適応感と学習意欲におよぼす影響について (坂部鉄也)
中学校における友人とのつきあい方の特徴と学校の楽しさ及び、学校ストレス軽減との関連 (脇本靖子)

 

2002 (平成14)年度
算数の授業場面における子どもの挙手行動を規定する要因について (岩本すみれ)
学校適応感と関連する学校生活場面の検討 −性格特性を媒介変数として−(長谷美佳)
教職志望意識に影響を与える教育実習中の出来事の検討 (山本顕典)

 

2003(平成15)年度
児童期における好意をもつ同性の友人に対する感情と行動の関連(堂ケ崎道世・修論)
友人関係ストレスにおけるソーシャル・サポート及びコーピングと適応(野坂弘子・修論)
理想自己・現実自己のズレの捉え方と、高校生活の順調さの関係について(梅景千春)
児童の自己開示に対する教師のリーダーシップ行動と児童のスクールモラールの交互作用について(斉藤美穂)

 

2004(平成16)年度
商店経営シミュレーション体験が小学生の職業観・勤労観、社会認識に及ぼす効果(山岸憲明・修論)
医学部学生における進路選択動機と職業レディネス、自我同一性及び達成動機との関連について−ステータス志向の高低に着目して−(上拾石・Grace・早紀)
中学生の主張性と学校場面における対人ストレス及びサポート環境の関係について−対友人に関して−(尾之上さやか)
中学生の友人関係における適応感と主張性の関係について〜友人とのつきあい方に着目して〜(河部真由子)

 

2005 (平成17)年度
高校生・大学生の友人関係における「状況に応じた切替」−心理的ストレス反応、自我同一性の感覚、個人志向性・社会志向性との関連にも注目して−(大谷宗啓・修論)
高校生の友人グループにおける生きづらさと個の表出(大森文子・修論)
教師に対する社会的勢力資源認知の違いと自己開示及び学校生活享受感との関係 (新庄隆英)
曖昧さへの寛容性とストレスコーピング及び友人満足感との関係−解決先送りコーピングのストレス低減効果の再検討− (高井寛史)

 

2006(平成18)年度
小学校高学年におけるキャリア教育発達測定尺度の作成と検討−「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み」に沿って−(瀧本景子・修論)
中学生の逸脱行動とその背景要因−心理面と環境面の相互作用的分析を中心に−(細江秀樹・修論)
自己概念の分化および明確性と適応との関連の再検討−自己概念のポジティブ・ネガティブ評価に着目して−(高橋葵)
自己の苦手領域の受容のあり方の規定要因の検討−自己効力感を促進する4要因に着目して−(津曲真希)
高校生の親しい友人関係における個別性の認識と適応感の関連(山田由美)

 

2007(平成19)年度
親しい友人との対人葛藤場面における中学生の主張の在り方とストレス反応との関連について−個人差にも着目して− (河野麻未)
受験期の高校生の自己志向的完全主義における母子間の関連−養育態度認知と同一視と関連づけて− (馬淵暁子)
親しい友人に対する主張行動の違いに影響を及ぼす関係性の検討−大学生における正当性のある主張に着目して− (丸山めぐみ)

 

2008 (平成20)年度
大学・学部選択動機と入学後の学業の充実感の関連について−認知された教育環境を媒介変数として− (岸本茂樹)
高校生の進路意思決定における変更プロセスがその満足度に及ぼす影響 (成田真理)

 

2009(平成21)年度
中学生の相談行動とその利益・コストの予期との関連−ソーシャルスキルと友だちとも付き合い方も絡めて− (勝田智子・修論)
小学生の学級での居場所保有感とクラス担任のリーダーシップ行動との関連(内川智恵美)
大学生の互恵的友人関係及び上手なあきらめと友人関係満足感との関連−親しい同性友人を対象に−(杉本麻衣)

 

2010 (平成22)年度
大学・学部選択動機と大学への適応感の関連−選択の自律性と大学の教育環境認知にも着目して− (岸本茂樹・修論)
中学生の教師に対する信頼感について−教師の関わり方に重点を置いて− (松井則幸・修論)
高校生女子における同性友人への同調行動−関係性及びパーソナリティとの関連− (小久保幸)
工業高校3年生の進路選択における無力感−「生きる力」の3要素からの検討− (西村真子)

 

2011(平成23)年度
大学生における偶発的な孤立状況に対する行動および感情−被異質視不安・自尊感情と関連づけて−(真藤浩大)
中学生はどのような友だちグループにいると高い居場所感を感じるのか(西村和未)
就職活動における理想自己・現実自己のズレと自己成長について−ズレの捉え方および対処に着目して−(松井誉子)

 

2012 (平成24)年度
高校生における特性自尊感情と学校適応感の関連−出来事経験、および進路意識との関連から−(今村有里)
教育実習前後の教職志望度の変化に関わる要因−期間中の周囲の友人との関係に着目して−(古川真実)
中学生における部活動内の先輩・同輩から受けるストレス及びソーシャルサポートと部活適応感の関連(村田尚大)

 

2013 (平成25)年度
小学校教師のリーダーシップ行動と児童の特性との相互作用−学級・学習・友人への関わりを効果の指標に−(北岡昌高・修論)
教育学部生における教職適応に対する自己効力に見られる実習前後の変化−達成経験と内的ワーキングモデルに着目して−(黒木小春)
教育学部生の教職科目における不適応的学習−学習動機の個人差と授業要因に着目して−(中田明里)

 

2014 (平成26)年度
中学生における時間的展望と学習に対する課題価値の関連(浅野真実)
対人関係に関わる理想・現実のズレの影響に及ぼす社会的比較の効果−自尊感情と自己形成意識に着目して−(新井眞侑)
教師アイデンティティの確立と危機及び成功体験の関連(荒木祐香)
小学6年生の学級における居場所感と友人関係−教育学部生への回想法調査から−(島本明日香)

 

2015 (平成27)年度
高校生における思考の硬さと疎外感の関連(村田悦彦・修論)
中学生の友人関係における主張性と適応−自己表明と他者配慮の観点から−(鹿田優美)
中学生の学級における被異質視不安と対人関係の関連−学級環境・親和的友人関係・対人スキルに着目して−(瀧澤澪)
教育実習の授業準備における先延ばし行動とその関連要因の検討(水越直之)

 

2016(平成28)年度
大学生の就職活動期における積極的不確実性と決定した進路に対する評価(王朱曦・修論)
小・中学生におけるセルフコントロールと家族・友人関係との関連−人間関係維持と自己成長の二側面から−(岡田萌)
小学生における学級居場所感と友人関係の指向性との関連(今野耀大)
中学生における自己関係づけと関連する対人関係様式−独立・同調の意識と原因帰属傾向に着目して−(笹野恵加)
中学生が認知する母親の養育態度とレジリエンスの関連−悩みや不安を感じたときの母親の対応に注目して−(澤井琴海)
高校生における拒否回避欲求と対象となる友人内での位置(杉浦真望)