<野外観察入門>
◆バイオシステムゼミのテーマ
 身近な動物の行動や生態を野外で繰り返し観察し、自分でデータを収集し、そのデータをシステム分析と統計学の手法を使って解析していきます。身近な動物としては、観察の手軽さから、野鳥をお勧めしています。双眼鏡や望遠鏡(フィールドスコープ)を駆使しながら、身近な野鳥の”表情”に触れたとき、単なる種名覚えではなく、野鳥の暮らしぶりとその背景に潜むシステムの存在に、きっと興味を駆り立てられることでしょう。   (写真↓右田先生がフィールドスコープを使って撮影:大津キャンパスで縄張りを張るモズ)

 生態系に関心のある人は少なくないようですが、生態系を構成する個々の生物について関心のある人は、ほとんどいないように思えてしまいます。野生生物は、身近な動植物ももちろん、捕食者や餌生物などの様々な種と密接な関係性を保ちながら、より多くの子孫を残すために洗練させた戦略を進化させています。自分の目でそのことを”発見”すると、おそらく人生観までかわるほどのインパクトがあると思います。生物の戦略を理解するためには、まず身近な環境の中で、お気に入りの動物と観察エリアを設定し、最低でも20回はその場所で繰り返して観察を行いましょう。河原でも街中でもキャンパスでも、危険な場所でなければどこでもOKです。特定の動物だけを対象に、20回も繰り返して観察してみると、私たちの生活とは無関係だと思えていた動物たちが身近な仲間のように思えてくるから不思議です。野生動物と”顔見知り”になってこそ、はじめて、いろいろなことが見えてくるはずです。詳しくは、このページ右上のリンク、『野外観察入門』を参照してください。

 ゼミの概要で述べましたが、生物界のシステムには実に多様なシステムが含まれています。バイオシステムゼミでは、個体レベル以上のマクロなシステムに的を絞り、身近な生物に対象を限定しています。
◆卒論の具体的な研究テーマは?
 卒業論文のテーマに関しては、各自の興味を尊重し、なるべく柔軟に対応してきました。これまでは情報教育課程の環境情報コースやシステム情報コース、理数情報コースを担当し、18年間で70名の卒論生を受け持ってきました。教員養成課程の理科教育コースとは違いますので、生物学や理科に興味のある人だけを選択的に受け入れることはできませんでした。したがって、人間をも対象として、人と自然環境の関わりや、企業活動を対象としたアンケート調査(質問紙調査)なども数多く行ってきました。例えば、企業活動を生態学の視点から分析する企業戦略の方法論を採用したり、行動経済学的手法を取り入れたりしてきました。しかしながら、環境問題や企業活動に関連した問題解決のそのものを目指すのではなく、あくまでもシステムの成り立ちと法則性にに重点を置いてきました。平成25年度からは、教員養成課程の情報・技術 専攻/専修の担当となり、教科「技術・家庭科」の「技術科」の中の情報分野と生物生産分野の卒論をする担当することになりました。これまでの経験を活かしつつ、卒論のテーマについては学生と話しながら決めていきたいと思っています。

これまでに実施してきた内容とからめて、以下のようないくつかのテーマについて説明しておきます。

1.理数情報コースでも小中学校の教員を目指す人がおりましたので、このことに対応し、校庭の動植物を対象として、教材としての自然のシステムを扱うテーマをお薦めしてきました。「技術科」でも、生物生産を理解する基礎としては生態系や身近な生物との関わりあいについて学ぶことはきわめて重要です。また、データ処理や画像解析の過程でパソコンに強くなることもできます。
(このテーマに興味のある人は、卒業論文ではありませんが、バイオシステムゼミ出身の鈴木美紀子さんの修士論文 『鈴木美紀子(2009) 平成20年度 滋賀大学大学院教育学研究科修士論文』 を参照してください)

2.上のテーマは教材化を目指していますが、純粋に校庭の植物、雑木林や花壇などを景観ととらえ、そこを利用する鳥類の種類や行動パターンを観察し、いろいろなことを見つけていくテーマを展開しています。

3.これまでのシステム情報コースや環境情報コースの時のノウハウが蓄積されていますので、琵琶湖のヨシ群落や人工湖岸、瀬田川洗堰下流の河原などで、景観の構造と野鳥の多様性や行動パターンの関係を調べることもお薦めです。
(このテーマに興味のある人は、卒業論文ではありませんが、このテーマで大学院を修了した松永悠さんの修士論文 『松永悠(2012)平成23年度 滋賀大学大学院教育学研究科修士論文』を参照してください)。

(写真↓ 湖北野鳥センター/琵琶湖水鳥・湿地センターの望遠鏡にデジカメをくっつけて撮影)


4.担当教員の個人研究の対象が、沖縄地方のサンゴ礁の動物(魚類や無脊椎動物)なので、もちろん旅費や滞在費は出せませんが、琉球大学の施設などを利用させてもらい、サンゴ礁で野外調査に挑戦することも可能です(これまでにやった人はまだ誰もいませんが…)。

5.琵琶湖沿岸域の景観構造と水鳥の場所利用に注目し、水鳥の種多様性が高まる場所を探っています(↓写真: 2003年度卒論生 日江井さん撮影:人工湖岸の多い草津市にも、冬になると、コハクチョウなど、多様な水鳥たちが集まってきます)
水鳥
6.河川の景観構造と水鳥の場所利用:化学物質の影響だけが問題とされることが多いようですが、河川改修などの形態変化が水鳥等の種多様性にどのように影響するのか、京都市の鴨川の河原等において調べてきました。

7.琵琶湖の動植物プランクトンの相互作用:プランクトンの研究では、種類別に培養しながら個体群の動態と環境要因との関係を追及することが多いようですが、動植物プランクトンの群集を行動学者の目から観察すると何か明らかにならないか?

8. ヒトの社会システムの解析:バイオシステムの解析手法を、ヒトの社会システム、例えば「ボランティアを主体としたリサイクルシステム」や「規制に頼らない公共施設の節度ある利用」などの解析にうまく応用できないか?

9. フィードバックシステムをとりいれたホームページの開発:バイオシステムの解析手法を応用した、より良いネット環境構築のための研究(このホームページが2003年度卒論生 斉藤さんの研究成果です)
 
要するに、身近なシステムを対象とし、構成要素の物質的な側面ではなく、構成要素間の関係性に注目し、"より良い"システムを実現するための条件や、環境条件の変化に対するシステムの挙動を、観察や実験、データ解析などから明らかにしていきます。

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