附小っ子宣言によせて
滋賀大学教育学部附属小学校は創立134年を迎える歴史と伝統のある学校です。
教育の基本理念を「いまを生きる」とし、先人の造りあげてこられた「過去」からの伝統を受け継いで「いま」を生きること、また、これから自らが造りあげ ていく新しい「未来」を志向しながら「いま」を生きることをどの時代においても標榜し、子どもたちの健全育成をめざし、その責務を果たしてきました。
このような教育理念に基づいて教育活動を行えたこと、また、そうした教育を受けることができたことは、附属小学校に関わった全ての者の誇りでもあります。
ところが、今、子どもたちを取り巻く社会は日々変化し、子どもをめぐる様々な問題が提起されています。附属小学校においても激変する社会状況の影響は避 けようもなく、少しずつ子どもたちの健やかな成長が阻まれてきています。社会生活における基本的なルールが守れない、人に迷惑をかけていても気にならない 等の姿が見られるようになってきました。
しかしながら、こうした子どもを取り巻く社会や環境の変化、気になる言動、問題行動などを嘆いていても仕方がありません。一つひとつの問題事象の要因、 背景を探ることは困難ですし、ましてやその問題事象の解決の手を打つことは至難の業です。ですから、対処法を考えるというよりもむしろ、積極的に子どもの 健全育成に向けた方策を考え、即行動に移すことこそ大切であるとの思いを強くしているところです。
では、わたしたちに何ができるのでしょうか。
附属小学校では、既に述べた教育理念の元、学校の教育目標を「心豊かで実行力のある子ども」を育てることとしています。子ども、保護者、教師一人ひとり がこの教育目標に向かって主体的に取り組むことを通して、学ぶ喜び、考える楽しさに溢れた学校づくりをめざしているのです。この目標を実現させるには、保 護者と学校が強い絆で結ばれていることが何より大切でしょう。その絆にするべくここに附小っ子宣言を策定します。
子どもが健やかに育つよう、学校と家庭が個々ばらばらに努力するのではなく、共通指針(スタンダード)のもとで連携を図りながら、学校と家庭が一体となって取り組むことで大きな成果が期待できると考えています。
本年度、附属小学校PTAは、子どもたちの生活実態を真正面から捉え、安全推進委員会を特別委員会から常置委員会にして、立ち番、乗車時のマナー指導な ど、子どもたちの健全育成の取り組みを強化されています。こうした時機を捉え、子ども自身が自らの行動をふり返ったり、逆に、自らの行動を決め出したりす る基準となる指針、加えて、保護者や教師が子どもを育て、支援する時の基準となるべき指針となるよう作成しました。
家庭、学校それぞれがこの附小っ子宣言という共通指針のもとで「学校教育」「家庭教育」を行い、それぞれの立場でご活用いただくことを願っています。
附小っ子宣言にこめた願い
ふ 「ふれあい」と「いのち」を だいじにします。
主として「ひと」「自然」「もの」に向けたもの(人・自然・もの・思いやり・いたわり・慈しみ)
- 弱者をかけがえのない人間として大切に思い、いたわる。
- 自分自身を含め、命あるものに対し慈しむ。
- 人権を大切にする。
- 自然を大切にする。
し 「しっかり」と「こころ」をこめて つたえます。
主として「礼儀」「言葉遣い」に向けたもの(言葉・優しさ・感謝・反省・素直さ・礼儀)
- 「ありがとう」「ごめんなさい」等が、心から言える。
- 感謝の心で生活する。
- あやまちは素直に認め、謝る。
- 礼儀正しく過ごすこと、言葉遣いを正すことを意識する。
よ 「よくかんがえ」て「ねばりづよく」やりぬきます。
主として「鍛錬」「忍耐」「失敗体験」に関するもの(集中・挑戦・意志・強さ・粘り・我慢)
- 集中して打ち込む。
- 最後まで投げ出さない。
- 困難な体験を大切にする。
- 本気で取り組む。
う 「うそ」や「いけないこと」を みのがしません。
主として自分自身の行動や社会性に向けたもの(きまり・責任・正直・自信・善悪・厳しさ)
- 正々堂々とした態度で生きる。
- 「自分さえ良ければ」という考えを持たない。
- 誠実で正直な行動をする。
- 社会のルールを尊重する。
っ 「つながり」と「でんとう」をたいせつにします。
主として生活や愛校心に関するもの(家族・先輩・先生・学舎・誇り・自覚)
- 学校の歴史や伝統を知る。
- 仲間や学校を大切にする。
- 先人、親、先生を敬う。
- 自信をもつ。
こ これからの「じぶん」と「みらい」のためにどりょくします。
主として目標の実現に向けたもの(夢・目標・勇気・継続・全力・達成)
- 目標にむかって努力する。
- 夢をもつ。
- よりよい学校、よりよい社会をつくっていこうとする。
- みんなのために持てる力を発揮する。
附小っ子宣言の結実に向けて
附属小学校の子ども、保護者、教師の願いをこめた附小っ子宣言ですが、これからがスタートです。学校では、教育活動のあらゆる場面でこの附小っ子宣言を活用します。
例えば、全校で、学年で、学級で次のような活動や指導を必要に応じて行います。
- あいさつ運動を行う。
- 一人一役の仕事を持つ。
- 縦割り集団(ファミリー)の活動を継続する。
- ボランティア活動を教育活動の中で取り入れる。
- 子どものがんばりをほめ、悪い行いを叱る。 など
この附小っ子宣言を結実させるには、学校が主体となって行動を起こすだけでは、その効果を発揮することは難しいと思われます。ご家庭におかれましても、 例えば、次のような取り組みにより、附小っ子宣言の結実に向けお取り組みいただき、附属小学校に関わる全ての人が力を結集することを願っています。
- 朝ご飯を家族でとるようにする。
- 附小っ子宣言をベースに、我が家のきまり(家訓)をつくる。
- 家族の一員としての仕事をする。
- 地域の行事に積極的に参加する。
- 子どものがんばりをほめ、悪い行いを叱る。 など
最後に、将来の日本を担う子どもたちの健全育成は、大人の責務です。この附小っ子宣言が家庭と学校の絆となり、附属小学校の教育の振興と各家庭における家庭教育の充実につながっていくようともにがんばりましょう。
平成21年7月
附属小学校ゆめタイム グッドマナー2009の子どもたち
附属小学校長 神山 保