<野外観察入門>
◆バイオシステムゼミの卒論のテーマ (2019年より理科でゼミを開講)
 野外観察教材の開発か野外観察による動植物の生態学的な研究を行います。いわゆるフィードルワークを重視しています。身近な野生の動植物を同じ場所で繰り返し観察し、自分でデータを蓄積し、そのデータを統計学的な手法を使って解析していくことが基本的な流れです。調査場所は、キャンパス内でも河原でも家の近所でも、危険な場所でなければどこでもOKです。「生物学実験」の授業の中でキャンパス内外の植物の野外観察を実施していますが、同様の手法を用い、観察エリアを限定し、最低でも同じ場所で20回、繰り返し観察を行います。何度も繰り返して同じ対象を同じ場で観察することにより、いままで気がつかなかった動植物の生態に気づくことができるようになるでしょう。身近な野生動物としては、観察の手軽さから、野鳥をお勧めしています。野鳥を観察すると、その生息地や餌として、植物も観察することになります。双眼鏡や望遠鏡(フィールドスコープ)を駆使しながら、身近な野鳥の”表情”に触れたとき、単なる種名覚えではなく、野鳥の暮らしぶりや植物との関係性など、背後に潜む生態学的なシステムの存在にきっと興味を駆り立てられることでしょう。   (写真↓右田先生がフィールドスコープを使って撮影:大津キャンパスで縄張を形成しているモズ)

 これまでの経験では、生態系に関心を持つ学生は少なくありませんが、生態系を構成する個々の生物について関心を持つ学生はあまりいませんでした。身近な野生の動植物は、捕食者や餌生物など、様々な種と密接な関係性を保ちながら、より多くの子孫を残すための洗練させた戦略を進化させています。自分の目でそのことを”発見”すると、おそらく人生観までかわるほどインパクトがあるのではないでしょうか。生物の戦略を理解するためには、まずは身近な場所で、テーマと観察対象を決めた観察を繰り返すことが有効です。特定の対象を20回以上もデータをとりながら観察していると、私たちの生活とは無関係だと思えていた野生動物たちが身近な仲間のように思えてくるから不思議です。野生動物と”顔見知り”になってこそ、、いろいろと見えてくることがたくさんあります。具体的な観察方法については、このページ右上のリンク、『野外観察入門』を参照してください。

 「ゼミの概要」で述べましたが、教育学部は生物学的な最先端の研究を行う組織ではありませんので、生態学的な最先端の研究を目指すよりも、むしろ野外観察の面白さを実感した上で、野外観察教材を開発することを目指したいと思います。つまり、小中高の教科書で扱われている生態分野の事柄について、実際に野外で観察することにより、何をどのように見ていけば教科書に載っている事柄がよく理解できるのかを経験し、その経験に基づいて野外観察教材を開発していきます。
◆卒論の具体的な研究テーマは?
 卒業論文のテーマに関しては、各自の興味と関心を尊重し、柔軟に対応します。これまでに、教育学部附属の環境教育湖沼実習センターの卒論生の担当から、その後の情報教育課程の環境情報コース、システム情報コース、理数情報コース、その後の情報・技術教育コースの卒論生の担当まで、20年以上の間に70名名以上の卒論生を受け持ってきました。2019年からは、教員養成課程の理科教育コースの生物学の担当になります。これまでの経験を活かしつつ、卒論のテーマについては学生と話しながら決めていきたいと思っています。

これまでに実施してきた内容とからめて、以下のようないくつかのテーマについて説明しておきます。

1.情報教育課程の担当の頃から、小中高の教員を目指す学生はいましたので、校庭の動植物を対象とした教材の開発を行ってきました。このテーマに興味のある人は、卒業論文ではありませんが、バイオシステムゼミ出身の鈴木美紀子さんの修士論文 『鈴木美紀子(2009) 平成20年度 滋賀大学大学院教育学研究科修士論文』 を参照してください。

2.上のテーマは教材化を目指していますが、キャンパス内での鳥類の種組成と行動パターンを観察し、純粋な生態学的な研究を行うことは可能です。この場合には、ドローン空撮を導入し、最先端の研究を目指します。

3.キャンパスから外に出て、琵琶湖のヨシ群落や人工湖岸、瀬田川洗堰下流の河原などで、野鳥の種組成と行動パターンを観察し、生息地の構造との関係を調べることも可能です。この場合には、ドローン空撮の他に、データ解析として統計学を勉強する必要が出てきます。このテーマに興味のある人は、卒業論文ではありませんが、このテーマで大学院を修了した松永悠さんの修士論文 『松永悠(2012)平成23年度 滋賀大学大学院教育学研究科修士論文』を参照してください。

(写真↓ 湖北野鳥センター/琵琶湖水鳥・湿地センターの望遠鏡にデジカメをくっつけて撮影)


4.琵琶湖や瀬田川以外でも、河川の鳥類の種組成と行動パターンを観察し、河川の構造と鳥類の多様性について生態学的な研究を行うことは可能です。例えば、これまでに、河川改修などの形態変化が水鳥等の種多様性にどのように影響するのか、京都市の鴨川や鴨川上流の賀茂川において調べてきました。

5.琵琶湖や瀬田川の動植物プランクトンの教材化:生物学実験でも実施してますが、動植物プランクトンを用いた教材化は様々な方向へ展開が可能です。

6. 身近な動植物の野外観察のためのホームページの開発:情報教育課程の時のノウハウを活かした教材としても利用可能なホームページを開発します(このホームページが2003年度卒論生 斉藤さんの研究成果です)  

7.担当教員の個人研究の対象が、沖縄地方のサンゴ礁の動物(魚類や無脊椎動物)なので、もちろん旅費や滞在費は出せませんが、琉球大学の施設などを利用させてもらい、サンゴ礁で野外調査に挑戦することも可能です(これまでにやった学生はまだ誰もいませんが…)。

要するに、身近な野生の動植物を対象に、生物の物質的な側面ではなく、生物間の関係性や生物と環境の関係性に注目し、教科書的に説明されている生態学的な現象について、実際にはどのようになっているのか、観察とデータ解析などから明らかにします。
 (2018年12月改訂)

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