[初等教育コース]初等教科専攻 国語専修/[中等教育コース]国語専攻

概要

皆さんは、入試を経て、「学校教育教員養成課程」に入学しますが、1年次の秋から、皆さんの関心にもとづき、専門の専修あるいは専攻に別れます。小学校教員をめざす人を中心とした「初等教育コース初等教科専攻・国語専修」、中学・高校教員をめざす人を中心とした「中等教育コース・国語専攻」は、国語科に関わる領域の専門性を高めて教師になりたいと思っている皆さんに最適の場所です。

学習指導要領が教科の枠を超えた「言語活動の充実」を重視しているように、教育という営みにおいて、「言語」はその中心に位置するものであるという認識が高まっていますが、国語研究室(初等と中等をまとめてこう呼んでおきます)では、国語科に関心のある人は勿論のこと、幅広くことばの問題を考えてみたい学生さんをお待ちしています。

国語研究室には、国語学1名、国文学1名、漢文学1名、書道1名、国語科教育1名の計5名の専任教員がいます。

取得可能な免許とカリキュラム

「初等教育コース初等教科専攻・国語専修」に所属する学生は、小学校教諭一種免許を主免(卒業と同時に取得する免許)とし、必要に応じて所定の単位を取得することにより、中学校教諭一種免許(国語)、高等学校教諭一種免許(国語)などを副免(所定科目の単位取得により取得する免許)として、複数の教員免許を取得することができます。

「中等教育コース・国語専攻」に所属する学生は、中学校教諭一種免許(国語)を主免とし、小学校教諭一種免許や高等学校教諭一種免許(国語)などを副免として、複数の教員免許を取得することができます。学生の中には、国語だけではなく、他の教科の免許や、幼稚園教諭、特別支援学校教諭などの免許を取得するひともいます。

教員免許を取得するには、交流実習(1・2年次)、基本実習(3年次)などの「教育参加カリキュラム」で開講される所定の単位を取得し、それぞれの免許取得のために必要な科目を履修することになります。国語学、国文学、漢文学、書道の専門科目(たとえば、「国語学概論」「国文学概論」「漢文学概論」「書道概説」など)や、教科教育法の授業(たとえば「初等国語科教育法」「中等国語科教育法」など)になります。

3・4年次は、各教員のゼミに所属し、専門の研究を積み重ねて、卒業論文を執筆することになります。それぞれの研究テーマを深め、最終的に卒業論文というかたちで結実させることで、専門性の高い教員になってもらいたいと考えています。

国語研究室ってどんなところ?

国語研究室は、5名の教員に対し、初等・中等合わせて20名前後が所属します。10名以上ということもざらの私立大学のゼミに比べれば、教員の目が一人ひとりの学生に行き届き、アットホームで、きめ細かい指導ができます。1年のあいだに行われる国語研究室のイベントとしては、8月のオープンキャンパスでは、おもに2回生や3回生が活躍して、学生生活やゼミの紹介を、高校生や保護者の方に行います。秋にコースが決定すると新歓コンパ、教育実習が終わると教育実習報告会、すべての回生が参加しての「教育実習ご苦労さんコンパ(通称「教ごく」)があります。また、卒業論文を書き終わると、2月上旬に卒業論文発表会で熱い議論を行った後、追い出しコンパが行われます。

卒業後の進路は、多くの学生が小学校や中学校の教員になります。教員採用試験に不合格になってしまっても、滋賀県は教員の需要が高く、多くの場合講師として採用され、次年度の採用試験に再チャレンジしています。なかには、公務員になったり一般企業に就職したり、自分の研究テーマをさらに深めるため、大学院に進学する学生もいます。

スタッフ紹介

井ノ口史(教授:日本古典文学)

日本古典文学を担当しています。研究対象は、およそ1300年前の人々が詠んだ和歌を集めた、日本最古 の歌集である『万葉集』です。その他、授業では平安時代から江戸時代までの様々な作品についての魅力を伝えるように心がけています。

古典と聞くと、文法の学習や文学史の暗記といったイメージが強く、「面倒くさい」、「とっつきにくい」と感じる人が多いかもしれません。しかし、助動詞や助詞を駆使して細やかなニュアンスを伝えようと努力するのは、古典も現代も変わりありません。また、逆らいがたい時代のうねりの中で、人間の生について思いをめぐらすのも同じです。作者たちが生きた背景を踏まえつつ、一つ一つの言葉に注目し、文章を読み解くための学修は、私たちの原点を探る上でとても重要な意味を持っているのです。

中学校国語教員免許を取得したい人は、2年次に必修科目である(国文学史I・II)を履修することになります。中学・高校の教科書で扱われる作品の読解を中心に、古代から近世までの文学史の流れを学びながら、文章読解や基礎的な知識を身につけることを目的とします。単位を落とすことのないように、しっかりと取り組みましょう。

日本古典文学で卒業論文を書く場合は、3年次で(国文学特殊講義I)と(国文学演習I)を取り、4年次の(国 文学研究I・II)で卒論指導を受けることになります。ゼミの人数は2~4人くらいですが、卒論のテーマを 決めるところから、調査の方法の確認や文献の集め方、原稿の執筆に至るまで、それぞれの興味や関心に合わせて指導します。

兼好法師のように、「見ぬ世の人」を友として、充実した時間を過ごしましょう。

過去の卒業論文の題目の例

  • 宇治十帖・浮舟物語における情景描写~「月」と「雨」を中心に~
  • 『雨月物語』における女性の人物造形―「吉備津の釜」磯良を中心に―
  • 「菊花の約」における漢字の使い分け―「まこと」をめぐって

長岡由記(准教授:国語科教育)

「授業」から連想する言葉を書き出していく活動を行うと、教師、児童、生徒、黒板、教科書、ノート、板 書、グループワーク、発表、個性、楽しい、眠い・・・・・・など多くの言葉が連ねられていきます。それらの言葉を見てみると、授業に対するイメージや授業で活用した道具、子どもからみた教師の姿などが多く挙げられていることが分かります。授業は、人と人との関わりの中で営まれるものであり、それぞれの願いや期 待、教育の目的、学習環境、学習活動など多くの要素から成り立っています。国語科の授業といった場合には、さらに教科独自の要素が連ねられていくことになります。

国語科教育に関する学部の授業では、これまで児童、生徒の立場で取り組んできた国語科授業をさまざまな 角度から捉え直すことによって、学びを生み出す授業デザインの諸要素を見出していきたいと思います。授業は、初等および中等国語科授業を担当するための基礎的な知識、技能を習得することを目的とし、模擬授業を取り入れながら目標、内容、方法、評価法等について学んでいきます。まずは自分で考えて実践してみて、改善点を修正し、さらに修正したものをやってみるという繰り返しを大事にしたいと思います。模擬授業をやってみると、時間配分、声かけの仕方、支援のタイミングと方法、振る舞い、授業前にしておくべき様々なことなど多くの課題が見えてきます。それらの課題について知恵を出し合いながら、授業デザインの方法を開拓していきましょう。先行実践から得られた多くの知見にも学びながら、自分ならどうするのかを常に考え、失敗を恐れずいろいろ試してみてください。そして、授業外の時間も含め、他の人と授業について語る時間を大切にしてください。このような活動を通して、自ら課題を見出し解決していくための様々な方法や手がかりをつかんでいけるようにしていきたいと考えています。

過去の卒業論文の題目の例

  • 小学校における「話すこと・聞くこと」の指導法の検討
  • メディア・リテラシー育成のための国語科授業法の開発
  • 読書感想文の指導法の検討
  • 国語科授業で育む「活用」力の検討
  • 小学校国語科教科書における挿絵の検討
  • 小学校入門期における漢字指導法について

中村史朗(教授:書道)

幼少時からの経験などを通じて書道に親しみを感じている人は少なくないでしょう。また、毛筆を使用しなくても、ことばを表記することと無縁の日常を送っている人はまずいないと思われます。程度の差こそあれ、誰しもが自分や他人の筆跡に何らかの関心を寄せつつ生活しているものです。たぐいまれな生命力を有する漢字を使用する文化圏においては、毛筆という簡素で万能の用具によって、史上数え切れないほどの筆跡のドラマが展開されてきました。その営みの蓄積は今日の表記にも影響を与え続けています。

書道の語が指し示す範囲はことのほか広く、大まかな輪郭をとらえるだけでも、あらゆる方面からのアプローチが必要です。私のゼミでは長い歴史のなかで育まれてきたこの芸術を総合的にとらえることを重視しています。手習いの反復だけが書道であるという立場からすれば、たとえば「上手になるために何回も練習をくり返す行為は約三〇〇〇年前から習慣化していた」とか、「今はやりのパフォーマンスの書道は四世紀ころから一般化していた」と聞けば意外に感じるかもしれません。幅広く学ぶことで、せまい常識から抜け出て広い視野を身につけると同時に、書くことを通じて私を表現することにも積極的に取り組めるようになります。

授業科目は、六種類の書道実技と概説、書道史、書論・鑑賞、教育法といった理論系の科目とで構成されています。古来の名筆に則して技法を学び鑑賞眼を高めるとともに、書道の歴史や書美をめぐる議論についても理解を深めます。また教師をめざす学生諸君にとって、書写・書道の指導について検討することも欠かすことはできません。ゼミ生は諸科目の履修を通じて次第に自身の関心の深い分野を探り当てるようになってきます。三回生の後半から自身のテーマにそって卒業研究に着手します。教員は中村一人しかいませんが、個別の関心を尊重しつつ多様なテーマ設定を支援するよう努めています。また卒業時の記念作品展はじめ、学生が自発的に学外で制作発表することも奨励し、自身の表現の到達を確認するよう促しています。

過去の卒業論文の題目の例

  • 平安朝における王羲之書法の受容
  • 巻筆の研究
  • 傅山の連綿表現-臨書作品を中心に-
  • 本阿弥光悦の書風変遷
  • 左利き児童、生徒の書写教育―のぞましい指導法の検討―
  • 中学校国語科書写における行書指導法改善の提案
  • 高等学校「書道Ⅰ」における指導法の検討―古典教材の扱いを中心に―

二宮美那子(教授:漢文学)

日本語・日本文化は、外部からさまざまな影響を受けつつ形成され、今現在もなお変化を続けています。こ の日本語・日本文化に、歴史的に見て最も大きな影響を与えたのが、中国古典(いわゆる「漢文」)です。文字・単語のレベルから始まり、美意識や道徳観といった抽象的なものに至るまで、その影響は深く大きなものです。日本語・日本文化を幅と奥行きをもって捉えるためには、漢文の知識は必要不可欠と言わねばなりません。

しかし、漢文・漢詩が社会の中で必須の教養とされた時代は遠くなりました。「漢文なんて、受験勉強の時 の「漢文句法」の暗記でしか知らないよ」、という方も多いかもしれません。私たちは、まずはそこから始めましょう。

二年生の授業では、訓読の技術的な面を復習しつつ、多様な作品に触れます。中国古典は一種の外国語です から、その翻訳方法である訓読の学習には、語学学習のような反復練習を必要とします。訓読の「お作法」に慣れるまでは少し大変かもしれませんが、訓読文の歯切れの良いリズムを味わい、文章にこめられた思惟をたどって、中国古典の世界の入り口をのぞいてみましょう。

三年生の授業では、主体的に読むこと、自分の読みを確立させることを目標に授業を進めます。日本人は、 漢文を読むときに、一文字一文字をおろそかにせず丁寧に読みこんできました。授業では、この良き伝統を大切にして、討論形式も取り入れながら、きめ細かく作品を分析してゆきます。

歴史の長さや内容の仰々しさに、ひるむ必要はありません。一定の基準はあれど、「自分なりの解釈」を許 容する懐の深さをもっているのが、古典の古典たる所以です。また時には曖昧さも許容するのが、中国古典語の特徴の一つです。そして、古典は「硬直した絶滅危惧種」ではなく、誰にでも開かれている柔軟なテキストであり、そこには先人たちの豊かな智恵が込められています。私たちは、歴代の日本人がしてきたように、古典から新たなものの見方を学ぶことができるし、また、現代にも共通する人間くさい一面に、共感することもできるのです。

中国古典に触れることで培われたものの見方は、日本語・日本文化をより立体的に、多面的に見せてくれる はずです。そして一歩進めて言うならば、お隣の国の歴史・文化・文学を学ぶことは、現代社会に生きる私たちにとって、決して無駄なことではありません。広い視野をもって、柔軟な発想で、中国古典とつきあっていただけたらと願っています。

過去の卒業論文の題目の例

  • 中国古典詩における女性
  • 詩人の雲への憧れ―漢魏晋から唐代を中心に―
  • 教科としての漢文の変遷―現状との対照の視点から―

松丸真大(教授:国語学)

最近、チガカッタ(違った)やキレカッタ(綺麗だった)という言い方を聞きますが、なぜこんな言い方が生まれるのでしょうか?関西方言で「いいヤンカ!」という表現は共通語の「いいジャナイカ!」に相当する表現ですが、それでは「昨日イオンに行ってんヤンカー」を共通語で「昨日イオンに行ったんジャナイーカ」のように翻訳するとおかしいのはなぜでしょうか?

我々は言葉をあまり意識せずに言葉を使っているために、あらためてそれを説明しろと言われると困ってしまいます。ことばを上手に使える人がそのことばについてよく知っているとは限らないのです。国語学(日本語学)という分野は、日本語ということばのしくみについて考える学問です。高校までの国語の授業とは全く違いますので、国語が苦手だった人でも大歓迎です(むしろ苦手だった人の方が良いかもしれません)。

国語学のゼミでは、方言・若者ことば・日本語と中国語の対照など、実際に使われていることばについて調べ、考えます。2年次の講義では国語学(日本語学)の基礎的な知識と考え方を身につけます。3年次の演習では、受講者全員で協力して調査を企画し、実際に滋賀県の様々な地域に出かけていって調査(フィールドワーク)をおこないます。この演習でことばを調べる方法を身につけていきます。また、このフィールドワークを通して、他の人たちと協力し合って共通の課題を解決していくことを学んでほしいと思っています。(写真は調査実施前の集合写真)

4年次のゼミでは、自分が興味をもったことばについて、深く掘り下げて考えます。ゼミでは「こんな言い方もあるよ」「こういう風に進めたらどう?」など、互いにアドバイスし合って卒業論文を仕上げていきます。

ことばについて興味があるかたはぜひ研究室をのぞいてみてください。

卒業論文のタイトルの例

  • 話し言葉における接続助詞「けど」の用法の変化
  • 漫画におけるヒロインの言葉づかいの変化から見る女性観
  • オノマトペの日中対照 ―村上春樹の『ノルウェイの森』を用いて―
  • 携帯メールからみるアイデンティティ
  • 接客言語行動における相づち表現?「そうなんですね」から考える
  • WWWをコーパスとしたコロケーション情報の抽出