[初等教育コース]初等教科専攻 社会専修/[中等教育コース]社会専攻

社会専攻・専修は、初等および中等段階の社会科教育を担える教員の養成をめざしています。現代は、グローバル化と知識を基盤とした社会の時代だといわれます。グローバル化によって、世界の出来事が、われわれの生活や仕事に影響します。また、知識を基盤とした社会では、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化のあらゆる活動の基盤となり、また、それらは急速に変化します。

このような社会で、社会に対する深い理解に基づき、諸問題の解決に取り組み、よりよい社会の形成に参画するための資質や能力が求められています。社会専攻・専修では、このような資質や能力を育成するための社会科教育を担える教員の養成をめざしています。

初等教育コース社会専修では、児童・生徒の、社会や社会生活に対する関心を高め、それらに対する理解を深めるための教育ができる教員を養成します。

中等教育コース社会専攻では、歴史・地理・公民を、それらに対する専門的な知識を基礎にして、幅広い視野と関心から、中等教育にふさわしい内容と方法で教えることのできる教員を養成します。

  • 卒業要件として取得出来る免許:小学校教諭1種または中学校教諭1種(社会科)
  • 他に取得出来る免許:高等学校教諭1種(地理歴史科)、高等学校教諭1種(公民科)

社会専攻・専修のカリキュラムについて

社会専攻・専修の必修科目として1年秋学期の「社会科教育の基礎」、2年春学期の「初等社会科教育法」があります。また必修科目ではありませんが、2年次(通年)の「社会科授業研究」があります。これは、社会科教育の実践の現場を見てもらうために、社会専攻・専修の学生のために開かれる科目です。

また、選択必修科目として、教科内容学7分野と教科教育学からそれぞれ1科目以上選択します。1年秋学期から2年春学期にかけて、これらの選択必修科目を中心に履修します。2年秋学期に、卒業論文を書く分野を決め、卒業論文の指導教員を決定します(1年秋学期終了時に希望調査を実施。なお、特定の教員に希望が集中した場合は調整を行います。)。その後、2年秋学期または3年春学期から各先生のゼミ(演習)に参加し専門を深めることになります。

必修及びそれに準じる社会専攻・専修科目

1年春学期

初等社会科内容学(火曜3限)

2年春学期

初等社会科教育法(火曜4限)

2年通年(集中)

社会科授業研究
学校教育の現場や、博物館、史跡、裁判所など社会科が実際に生かされている場を実際に体験します。

選択必修科目

科目群①(日本史)

日本史概論I
考古学の基礎的研究方法を学ぶ。
日本史概論II
平安〜江戸時代の中からとりあげたいくつかのテーマを、史料に即して学ぶ。
地域からの日本史
滋賀県地域の史料を用いて、日本の近現代史を学ぶ。

科目群②(外国史)

外国史概論I
歴史研究の基礎となる一次史料に基づいて、古代から近現代に至るまでのヨーロッパの歴史の特色を理解する。
外国史概論II
近代中国の生活や文化を通して、アジアにおける近代化とはどのようなものであったのかを考える。
ヨーロッパ文化史
ヨーロッパ文化の基礎となる古典文献の読解を通して、ヨーロッパ文化の特色を理解するとともに、歴史学における史料批判を体験する。

科目群③(地理学)

地理学概説I
新旧地形図の読図や史資料の活用を通じて、人間の諸活動により歴史的に形成されてきた現在の景観についての理解を深める。
地理学概説II
日本列島の自然環境や自然災害について概観するとともに、公害などの地域環境への産業化の影響について考察するとともに地形図の読図に習熟する。

科目群④(地誌)

地誌学
中学校地理的分野の授業をするために、世界の地誌を学ぶとともに、滋賀・京都という身近な地域や日本の諸地域について教材研究する。

科目群⑤(法律学、政治学)

法律学概論
教育現場で起こった事件を中心に、判決文の精読を通じて、法的概念や法解釈について学ぶ。
政治学概論
中学校社会(公民的分野)の教科書をもとにして、政治学の概論を、学術的な研究成果と関連づけて深く理解することを目指す。

科目群⑥(社会学、経済学)

経済学概論
中学校教科書「公民」の内容を経済的基礎概念と関連させて学ぶ。
社会学概説
社会学の基本的な考え方を理解することを目標にする。

科目群⑦(哲学、倫理学)

哲学概論
哲学というものが、いかなるものであるかを知るとともに、哲学的問題について自ら考察を進めるための方法を学ぶ。
倫理学概論
現代社会における倫理について考える上で重要なテーマや問題に沿うかたちで、代表的な倫理思想について学んでいく。

教科教育学

社会科・地理歴史科教育法
中学校と高校の歴史教育及び地理教育について、カリキュラム・教科書・授業を中心に学ぶ。
社会科・公民科教育法
中学校公民的分野及び高等学校公民科の教育法について学ぶ。

社会専攻・専修の教員の紹介

宇佐見 隆之

[専門分野]日本史
[主要担当科目]日本史概論II、初等社会科内容学、歴史学研究法I

歴史を解明するためには、古文書や記録(日記)などの史料の理解が欠かせないため、講義でも史料の理解を中心に進めています。また、日本史で卒業論文を書こうとする人は、2年の秋学期から3年にかけて『吾妻鏡』や『信長公記』などの講読を行い、基礎を身につけることになります。 専門は、日本史の中でも鎌倉時代から江戸時代初めにかけての社会経済史で、特に交通や商業に関わる面を研究していますが、ゼミで書かれた学生の論文は、平安時代から江戸時代まで、賀茂祭、山城(やまじろ)、石見銀山、産婆さんの研究まで多岐にわたっています。また近江は歴史の宝庫ですから地域の研究をする素材としてもネタはつきません。

大清水 裕

[専門分野]西洋史
[主要担当科目]外国史概論I、ヨーロッパ文化史、地理歴史科教材内容論

西洋史、中でも古代ローマ史が専門です。日本から見るとヨーロッパは遠く感じられますが、明治維新以降、日本社会は「近代化」の名の下でヨーロッパから多くの影響をうけてきました。古代ローマは、キリスト教とならんで、そのヨーロッパ文化の基層をなしていると言えます。講義は、ヨーロッパを中心とした西洋の歴史の流れを古代から近代まで体系的に理解できるようになることを目指しています。演習は、主に西洋史で卒業論文を書く学生を対象に、史料に即して自分の考えを論理的に説明できるようになることを目的としています。

安藤 哲郎

[専門分野]地理学
[主要担当科目]地理学概説I、地誌学、比較地域論

地理学は、「地域」を研究対象とする学問であるという点では共通していますが、アプローチの仕方には様々あります。中にはある地域に関して時間軸を動かしながら過去に遡って研究していく分野もあり、「歴史地理学」と呼ばれるこの領域を中心に研究してきました。「歴史地理学」ですので、地理学の基礎の上に、歴史への理解が必要な分野で、一見すると大変そうに見えますが、歴史と地理が不可分であると感じられる場面は多くあります。例えば、目の前に見える町や道路がどのようにして今の姿になったのかを考えようとすると、現在の地図や古地図のほかに史料が必要になることもよくあります。地理学から歴史を考える面白さを、授業を通じてお話したいと思います。
さらに、歴史地理学のような分野横断的な要素をもつ学問の観点から、学習的な旅へのアプローチや教育への活用という面に積極的に取り組んでいます。「分からないこと」を解決するのに、分野の別にこたわりすぎず、様々な角度から見つめていきたいところです。特に地理と歴史について横断的に学ぶ重要性を、教育を通じて伝えられる方法を模索しています。また、町を歩きながら(フィールドワーク)共に学んでいくことにも挑戦しているところです。

渡辺 暁彦

[専門分野]憲法・比較憲法
[主要担当科目]日本国憲法、法律学概論、環境法概論、情報社会と情報倫理

社会専攻・専修で法律学ゼミを担当しています。専門は憲法、特に統治機構に関する領域です。諸外国との比較(特にドイツと韓国を中心に)を通して、日本の国会・内閣制度が抱える諸問題について検討を行っています。最近では、「学校と法」という視点から、学校教育の現場で生じている争いについて考察を行っています。ゼミでは、そうした憲法や教育法に関わる問題だけでなく、民法や刑法、あるいはまた環境保全やインターネット等に関する最近の法的課題にいたるまで、多種多様な内容が対象となります。多様な意見・考え方に接しながら、自らの意見を形成していく良い機会になればと考えています。

馬場 義弘

[専門分野]政治学、日本史
[主要担当科目]政治学概論、地域からの日本史、政治学演習

日本の近代政治史を研究しています。とくに明治前期の滋賀県政史および教育史に関心があります。政治学演習では、政治学の古典的な著作を精読しています。卒業論文では、「ロンドン海軍軍縮条約の批准をめぐる政治過程」「政友会の外交政策と内田康哉」など日本政治史に関するもの、「子どもの貧困に対する福祉政策と民間事業」「廃線と地域社会」など公共政策・公共事業にかんするもの、さらに「一柳満喜子の教育思想」など教育史に関するものなどがあります。

宮本 結佳

[専門分野]社会学
[主要担当科目]環境社会学、社会学概説、社会環境演習I~IV

専門は社会学、特に環境社会学と呼ばれる分野を中心に研究しています。私自身は、現代アートプロジェクトの展開を通じて日本の周縁地域にどのような景観が創造されているのかに関心を持ち、作家・地域住民などプロジェクトにかかわる様々なアクターに聞き取りを中心とした調査を行ってきました。社会学は、地域社会、家族、階層、文化など多様なテーマを研究対象とします。どのような対象を扱うにしても、研究を行うにあたって対象をどのような方法で調査することができるかを知っておくことは大切です。授業では自分自身が関心を持った対象を調べるための社会調査の手法(聞き取り調査や質問紙調査など)を学び、関心をもつ事象の調査を実施できるスキルの獲得を目指します。

斎藤 浩文

[専門分野]哲学
[主要担当科目]哲学概論、ヨーロッパの思想と文化、哲学演習I、II

専門は、言語哲学、論理学・数学の哲学や、科学哲学と呼ばれる分野です。主として英米を中心として展開されてきた分析哲学と呼ばれるスタイルで研究しています。 授業では、広く哲学・論理学の基本を学んだ上で、ゼミにおいて、その思考法や議論の仕方を身につけてもらうことを目指します。具体的には、3回生時にテキストの講読や、各自の関心に基づくエッセイ執筆およびその発表を行い、4回生時の卒業論文執筆へと導きます。これまでの卒論テーマには、たとえば、次のようなものがありました。「サイエンス・フィクションにみる人間観」「心についての科学的な捉え方をめぐって」「色のない絵本」「同一性・言語・時間」「自己概念をめぐる謎」「二重否定について」「自由意志と無意識」「『萌え』について」「トロープ唯名論における『実体』の構成」「ニーチェの思想に関する考察」「普遍者の存在について」「臨床の現場で生まれる『ことば』について」

岸本 実研究室Webサイト

[専門分野]社会科教育学
[主要担当科目]初等社会科教育法、社会科・公民科教育法、地域社会と教育、社会の臨床的授業研究。

子どもの社会認識、社会科のカリキュラム、授業および教育評価についての理論と実践 の統一が中心のテーマです。社会科教育学で卒業論文を書こうとする人は、2、3年で履 修する教科教育学(初等社会科教育法、社会・地歴科教育法、社会・公民科教育法)で、理論と実践の基礎を学んだうえに、3年生で社会科の教育方法に関する文献、社会科の歴 史や外国の社会科に関する文献の理論的な学習を進めます。また、学校調査や授業研究な どのフィールドワークや現職の大学院生との交流により実践的な視野を深めていきます。
教員は、アメリカ合衆国の社会科、社会科の教育評価論、風土を生かした環境教育論を考察しながら社会科における「探究」論を専門として研究しています。卒業論文(修士論文を含む)では、社会科のポートフォリオ評価法、社会科の批判的思考に関する米国の事例研究、内モンゴルの砂漠化問題に関する意識調査と教材開発、滋賀県における在日ブラジル人の教育、在日韓国・朝鮮人社会に関する教材開発、地域教材を生かした小学校歴史教育、戦後初期の桜田小学校のコア・カリキュラム、まちづくり学習、風刺画教材による近現代史学習、日本史教育におけるジェンダー・フリー、堀川小学校の社会科授業における思考の発展、ワールドスタディズ、東井義雄など、幅広く社会科に関連した多彩なテーマに取り組んでいます。

なお、教員の定年退職や異動などにより一部の分野の教員がいない場合があります。