[初等教育コース]初等理科専攻

本専攻では,自らも理科を楽しみながら理科の面白さを伝えられる教員の養成を目指しています。自然界の事象に対する疑問について,観察・実験を通して児童・生徒自らが考え,その答えを見つけられるように指導や支援を行うことが重要と考えます。そのためには,児童・生徒の目線で考える姿勢や自然科学の理論体系を含めた理科の幅広い知識を養う必要があります。初等教育コース初等理科専攻では,小学校教科の中でも理科を得意分野とすることができるように,物理・化学・生物・地学各教科専門教員の指導により小学校理科の観察・実験で必要な技能を身に付け,さらに理科教育学専門教員から児童・生徒の考え方やそれにもとづく教育法を学びます。中等教育コース理科専攻では,中学校・高校の理科教員に必要な専門知識や専門分野の理解を深めるための講義や演習の受講,最先端研究に関する知識の習得などを行います。それと共に理科の効果的な指導法や理科教育学について専門的に学びます。

スタッフ紹介

恒川 雅典(教授:物理学・物性実験)

電子の世界を調べて物性を解明する

「太陽電池はどうやって光を電気に変えているの?」「電気を通しにくい絶縁体でも超伝導を示すことがあるの?」「鉄でも非磁性状態になるの?」 このような疑問に答えるために,とても小さな「電子の世界」に目を向けます。身近な物質だけでなく,高温超伝導体や珍しい強磁性体などの「電子の世界」を丁寧に調べていきます。一見複雑な物理現象であっても,その本質をシンプルなイメージで捉えられるようになることが目標です。

卒業論文タイトルの例

  • 銅酸化物高温超伝導体の高分解能光電子分光
  • Co2CrGaのスピン電子状態

糸乗 前(教授:有機化学・生化学)

生命現象を化学で解明する

私たちの研究対象は,様々な生き物の糖脂質という化学物質で,その構造解析実験から世界初となる発見をしています。生物の多様性を糖脂質という物質の化学構造で説明できればと思っています。また研究から,小中高校生を対象とした環境・理科・生命科学教育の実験講座などへも発展させています。

卒業論文タイトルの例

  • 無脊椎動物の糖脂質糖鎖の多様性
  • アメリカオオアカイカ皮のヒト血液型糖鎖配列含有中性スフィンゴ糖脂質の構造解析
  • ゲノム配列決定動物カイコ蛹のリン糖脂質の構造解析

徳田 陽明(教授:物理化学・無機化学)

化学を物理で理解して,世界初の無機材料を作ろう

化学というと,何を思い浮かべますか?ある時代には環境汚染を引き起こすこともありました。しかし,例えばアンモニアを人(化学)の力で作ることができるようになって,化学肥料を作ることができるようになりました。そして,食糧が増え,人口の爆発的な増加につながりました。また,医薬品を作れるようになって,寿命が延び,生活の質が高くなりました。このように,化学は私たちの暮らしを支えている大事な学問です。  また,知の広がりは,学問の分野間の垣根を取り払いつつあります。分野の境界にこそ新発見があります。今や旧来の分野の垣根は無くなりつつあり,分野毎の境界領域(学際領域)が重要となっています。分野間の境界を取り払うことは,言うは易く行うは難しいものです。そこで,化学の研究対象として扱われる物質を物理的な視点で理解する,という探求を通じて,分野を融合した教育実践・先端研究へとつなげていきます。 もう少し専門的に説明します。物質の多彩な性質は元素の多様性によって生み出されています。このような元素の多様性は現代科学においては化学と物理の学際領域によって理解されています。磁気共鳴や量子化学を使うことで,原子・分子の電子の状態を知ることができます。このような知恵に基づいて,世界初の無機材料を作ります。 先端研究を通じて,学際的な視点をもった人材を育成し,地域社会での理科教育での指導的な役割を果たす人材を育成します。また,子どもにとって魅力あふれる学際的な教材開発を行います。

卒業論文タイトルの例

  • 無機ガラス材料の創成
  • 有機・無機ハイブリッド材料の創成
  • 放射性セシウムの環境への固定・農作物への移行の低減
  • 化学と物理の結びつきを実感できる理科教材の考案

古橋 潔(教授:細胞生物学・生化学)

タンパク質の働きを探る

粘菌やキノコなどの下等生物が休眠体になる時に,いろいろな酵素がどのような役割を果たしているのかを調べています。卒業論文では小・中学校で行う実験授業のマニュアル作成などを行っています。

卒業論文タイトルの例

  • ヒト血液成分顕微鏡観察用マニュアルの作成
  • 小学校理科における光合成実験の材料・方法の検討
  • 滋賀大学教育学部キャンパス内のチョウの分布調査

服部 昭尚(教授:生態学・動物行動学)

野外観察とデータ解析から生物の適応戦略を探る

野生生物は身近な場所にもたくさん見られます。それぞれが独自に環境に適応し、様々な適応戦略を進化させています。キャンパス内や湖岸などにおいて、実際に動植物を観察し、適応戦略を探ります。動物の行動や植物の形などに基づいて仮説を立て、光学機器や空撮画像などを駆使してデータを集め、コンピュータを用いて解析し、仮説を検証します。野外観察の普及とその教材化にも取り組みます。

卒業論文タイトルの例

  • 小学校校庭における野外観察の試み‐子どもの目線を活かした身近な生き物の教材化
  • 大学周辺の住宅地におけるサワガニの好む景観構造‐生活用水路は生息地になりうるか?
  • 琵琶湖南湖における景観構造のシステム分析‐水鳥の生息環境から沿岸域の重要性を考える
  • 琵琶湖におけるコウモリの飛行空間の解析‐市街地における人工物の利用

大山 真満(准教授:天文教育学・太陽物理学)

理解力・能力の向上を考える

小学校や中学校で学習する天文分野を苦手としている人や仕組みを理解せずに暗記して終わっている人は多くいます。また、天文分野の指導を苦手としている小・中学校教員も多くいます。では、天文分野を理解していくためには、また、子どもに理解させていくにはどうすればよいのでしょうか。これらの課題について一緒に考えていきましょう。

卒業論文タイトルの例

  • 月の満ち欠けに関わる空間認識能力についての研究-教員養成学部生を対象とした調査 結果をもとに-
  • 対流に関連する小・中学校理科の大学生の定着度と活用力の研究
  • 天体望遠鏡の使用に関する動画データベースの作成 ~赤道儀・屈折望遠鏡編 ~

藤岡 達也(教授:科学教育・自然環境教育・防災教育)

理科好きの子どもを育てる

「理科離れ」「理科嫌い」の子ども達が多いと言われます。でも,多様な自然現象の影響を受け,また,科学技術立国を目指す日本にとって困ったことです。何より,先生を目指す人が科学に興味や関心を持ってもらいたいと思います。美しさ,不思議さ,そして凄さを持つ自然界の何を,そしてどのように,子ども達に伝えていくのか実践や体験を通して,考えていきましょう。国際的な動向や歴史的な展開を視野に入れ,他の教科や教育活動との関連性も踏まえて,現在の日本の理科教育を見つめ直し,これからの科学教育の在り方を探っていきましょう。

卒業論文・修士論文のテーマ

  • 〈学校外の科学教育の場〉の研究
  • 地域素材をいかした中学校における科学・技術・社会相互関連教育(STS教育)の展開
  • 自然災害や防災を素材とした中学校における持続可能な開発のための教育(ESD)-岐阜・西濃地域を中心とした学習プログラムの構想-
  • 地域の自然環境に着目した総合学習の展開-北海道の自然と人間とのかかわりを例にして-
  • 小学校における理科教育活性化に向けての展開と課題
  • 地域の河川と人間活動とのかかわりを重視した環境教育-新潟県燕市を事例とした教材開発-
  • 能登半島の地域素材を活用した体験活動について
  • 「環境教育のフィールドとしての都市公園の利用の意義と活用」-「総合的な学習の時間」と教科の連動を重視して-

加納 圭(教授:科学教育・科学コミュニケーション)

科学と社会をつなぐ

近年の急速な科学の発展に伴い,科学が社会に与える影響が大きくなってきています。また特に2011年3月11日の東日本大震災以降,その影響に大きな注目が集まるだけでなく,逆に,社会が科学に与える影響も大きくなってきています。そこで,当研究室では科学と社会のより良い関係の構築を目指しています。「理科教育番組を活用したアクティブラーニング」,「ボードゲームを活用したアクティブラーニング」,「戦前教科書の比較研究」「より良い科学技術イノベーション政策立案の仕組みづくり」など幅広い研究テーマを扱っています。

卒業論文・修士論文のテーマ

  • NHK Eテレ「考えるカラス~科学の考え方~」連動のアクティブラーニング型授業開発
  • 「科学への低関心層」に注目した調査
  • 男女別学時代の教科書比較

専攻のカリキュラム 主たる卒業要件としての教員免許は,初等教育コース初等理科専攻では小学校教員免許,中等教育コース理科専攻では中学校理科教員免許になります。どちらを選ぶかにより,カリキュラムが異なります。またこれらのうち,主たる卒業要件以外の免許も副免許として取得することが可能です。更に,理科の高校教員免許や中学校の他教科の免許のほか,幼稚園や特別支援学校といった他校種の免許を取得することも可能です。